■【起】〜古びたマンションと不気味な予感〜
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大学生だった頃、私は友人の家によく遊びに行っていました。
その友人は8階建てマンションの最上階に住んでいて、3LDKの部屋を他の2人とルームシェアしています。
どの部屋も同じくらいの広さで、住人は大学生や家族などさまざまです。
何度か訪れるうちに、そのマンションの雰囲気は「古めかしい」としか言いようがなく、管理も行き届いていない様子でした。
敷地内の木々も手入れされておらず、どこか不気味な空気が漂っています。
エレベーターも例外ではなく、初めて乗ったときは少し不安になるほどの古さでした。
まるで時間が止まったかのような建物で、ただならぬ気配が感じられたのを覚えています。
■【承】〜少年との出会いと繰り返される違和感〜
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ある日、友人の部屋を訪ねるためエレベーターを待っていると、4歳か5歳くらいの小さな男の子が走ってきました。
ボタンに手が届かず背伸びする姿が微笑ましく、私は「何階に行くの?」と尋ねました。
「6階!」という返事に6階のボタンを押してあげると、到着後、その子は「ちゃんとでてきてくれるかな〜」と言いながら603号室のチャイムを押し、扉が開くのをじっと待っていました。
私は803号室の友人宅を訪ね、夜が更けるまで楽しく宅飲みをしていました。
やがてお酒が足りなくなり、午前3時にスーパーへ買い出しに行くことに。
再びエレベーターに乗ると、昼間と同じ男の子がまた走ってきて、今度は「7階だよ」と告げます。
彼は703号室のチャイムを押し、またも「ちゃんとでてきてくれるかな〜」と口にして去っていきました。
この違和感に、私は妙な胸騒ぎを覚え始めていました。
■【転】〜真夜中のチャイムと“声”の正体〜
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買い出しから戻り、エレベーターでの出来事を友人に話すと、彼は「603号室には子供なんかいない」と言います。
先輩に確認してみると、昼間チャイムの音は聞こえたけれど、誰もいなかったとのこと。
不安の中で寝ようとしたその時、「ピンポーン」と突然チャイムが鳴り響きました。
直感的に「これは出てはいけない」と感じて身動きが取れません。
しかし、友人は「少しだけ外を覗いてみる」と言って玄関へ向かいます。
ほどなく戻ってきた友人は「誰もいなかったよ」と安堵させたものの、続けてこう言いました。
「外には誰もいなかったけど、玄関に近づいたら、“ちゃんとでてきてくれるかな〜”って小さな子供の声が聞こえた…」
■【結】〜開けなかった扉と、消えぬ後味〜
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その夜を境に、私はもう二度とその部屋へは行きませんでした。
友人も卒業と同時に引っ越し、あのマンションとも縁が切れました。
もし、あのとき玄関の扉を開けていたら、いったい何が起こっていたのでしょうか。
今でも時折、あの子供の声と、開けなかった扉の向こうにある“何か”を思い出し、背筋が寒くなるのです。
怖い話:深夜のマンションで出会った“不在”の子供―エレベーターに潜む恐怖の余韻
深夜のマンションで出会った“不在”の子供―エレベーターに潜む恐怖の余韻
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