○田舎のコンビニ・バックルーム(深夜)
N:田舎町のコンビニ。
夜が更けるほど、静寂に包まれていく。
(蛍光灯がうっすらと照らすバックルーム。
漫画や雑誌が散らばっている)
登場人物:
ユウタ(19・素朴な大学生バイト)
サトシ(22・ぶっきらぼうだが面倒見の良い先輩)
ユウタ:(お菓子を口に入れながら、漫画を読む)
サトシ:(背中を壁に預けて、雑誌をパラパラとめくる)
SE:遠くで冷蔵庫のモーター音
ユウタ:(退屈そうに)
「……今日も暇っすね。
」
サトシ:(苦笑しながら)
「こんな田舎、夜中に来るやつなんていねぇよ。
」
(ふと、モニターに目をやる)
○同・バックルーム(続き)
(モニターは4分割。
レジ、食料品棚、本棚。
ユウタが何気なく画面を指差す)
ユウタ:(眉をひそめて)
「……あれ、誰か本棚のとこにいますよ。
」
サトシ:(顔を上げる。
モニターを凝視)
「女……か? チャイム鳴らなかったよな……」
ユウタ:(小さく頷く)
「たまに鳴らないこともありますし。
」
(画面には、腰まである長い髪の女が、本棚の前でじっと立っている)
サトシ:(低い声で、警戒気味に)
「なんか、様子がおかしいな。
……万引きかもな。
」
ユウタ:(息を呑む)(サトシと見つめ合う)
サトシ:(立ち上がる)
「二手に分かれて挟むぞ。
お前はバックから行け。
」
ユウタ:(無言で頷き、雑誌を置く)
○店内・本棚付近(深夜)
SE:ユウタの足音、サトシの足音
(ユウタがバックルーム出口から、サトシはレジ側から本棚へ。
二人の視線が交錯)
(ガラス窓越しに薄明かり。
誰もいない本棚)
ユウタ:(困惑して、サトシと目を合わせる)
サトシ:(小さく首を傾げ)
「……いない、な。
」
SE:トイレの方から水を流す音
ユウタ:(ほっとするように)
「トイレ……ですかね?」
サトシ:(肩をすくめて)
「戻るか。
」
○バックルーム(続き)
(モニターに目をやる二人。
表情が一変する)
SE:心臓の鼓動音(BGM:不穏な低音)
ユウタ:(震える声で)
「……また、いる。
」
(画面には、さっきと全く同じ位置で女が本棚を見つめている)
サトシ:(青ざめて、ユウタを見る)
サトシ:(声をひそめて)
「早すぎる……ありえねぇ。
」
(二人、もう一度無言で頷き、バックルームを出る)
○店内・本棚付近(続き)
(今度も誰もいない。
二人、冷や汗を拭いながらバックルームへ戻る)
○バックルーム(続き)
(先輩が真っ先にモニターに顔を近づける)
サトシ:(食い入るように画面を見る)
「あっ……いなくなってる。
」
ユウタ:(ほっと息を吐く)
(しかし、ユウタの表情が硬直する)
サトシ:(低い声で、動かずに)
「……動くな。
」
ユウタ:(戸惑いながら)
「え……?」
(サトシ、中腰のまま固まっている。
目だけがユウタを捉える)
サトシ:(さらに低く、押し殺して)
「絶対に、振り向くな。
……今。
」
(ユウタ、息を止めてモニターを見る。
モニターの反射に自分とサトシの顔――その間に、女の顔が映り込んでいる)
SE:心拍音MAX
ユウタ:(声を震わせて、内心の声)
(心の声)まさか、すぐ後ろに――
(息を殺して数分。
女の気配がすっと遠ざかる)
SE:足音が遠ざかる
(間)
サトシ:(小声で)
「……もういい。
」
ユウタ:(おそるおそる振り返る)(誰もいない)
(テーブルに手をつき、膝が震えるユウタ)
サトシ:(脱力したような声で)
「ここ……なんか出んのかなぁ。
」
ユウタ:(苦笑いしながら、疲れきって)
「……そうですね。
」
(そのとき、サトシが突然テーブルから離れる)
ユウタ:(不思議そうにサトシを見る)
(サトシの目は見開かれ、モニターを凝視)
ユウタ:(視線をたどる)
(モニターには、先ほどの女がカメラ目線で、口を大きく開いて笑っている)
SE:女の不気味な笑い声(エコー)
(凍りつく二人。
即座に顔を見合わせ、裏口へ駆け出す)
SE:裏口のドアがバタンと閉まる音
○コンビニ裏手・外(夜明け前)
(暗闇に二人、肩で息をしながらしゃがみこむ)
N:店に戻る勇気が出たのは、夜明け、配達トラックが来た頃だった。
○店内(夜明け)
(静まり返った店内。
女の気配は、どこにもない)
N:今思えば、あれは本当にあったことなのか――
N:僕が人生で一度だけ体験した、恐怖の夜。
(BGM:静かにフェードアウト)
仕事・学校の話:深夜のコンビニエンス 〜監視カメラが映したもの〜
深夜のコンビニエンス 〜監視カメラが映したもの〜
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