「モニターに映っていたのは、さっきの女がカメラの方を向いて、ニタァ〜っと大口を開けて笑っている姿だった。
」
僕と先輩は、その異様な光景を見た瞬間、言葉も発せず裏口から飛び出していた。
夜の田舎のコンビニに、僕たち二人の心臓の音だけが残された。
明け方、配達のトラックが来るまで、僕らは二度と店に近づく勇気を持てなかった。
なぜ、あの女がカメラに向かって笑ったのか?
その直前、バックルームのモニターには、確かに女の姿は消えていたはずだった。
「ここって、なんか出るんかなぁ」
脱力した先輩の声に同意しながらも、僕はふと先輩の視線に気づいた。
先輩の目線の先、モニターには、再びあの女が現れていた。
しかも、真っ直ぐこちらを見つめて、不気味に笑っていたのだ。
だが、恐怖はその前から静かに忍び寄っていた。
数分前、僕と先輩は本棚を挟み撃ちしようと店内を探し回ったが、女の姿はどこにもなかった。
バックルームに戻ってモニターを見ると、そこには女が本棚の前に立ち続けていた。
「早い……早すぎる」
トイレの水音が聞こえ、僕たちは一度は安堵しかけたが、女はその場から一歩も動いていなかった。
さらに記憶を巻き戻そう。
すべての始まりは、あの静かな深夜だった。
僕は田舎のコンビニで、先輩と漫画や雑誌を読みながら暇を持て余していた。
モニターをなんとなくチェックした時、本棚の前に腰まである長い髪の女が映っていた。
チャイムは鳴らなかった。
女はただじっと本棚を見つめていた。
「万引きでもするつもりか」と先輩が呟き、僕は無言で頷いた。
二人で本棚を挟み撃ちにしようとバックルームを出たが、店内には誰もいなかった。
その後、モニターに再び映る女の姿。
「モニターが過去の映像を映しているのかもしれない」
そう疑いながら何度も確かめるが、女は消えて現れ、そしてついには僕たちのすぐ背後に気配を感じさせた。
「いいか、絶対に振り向くなよ。
いま」
先輩の押し殺した声。
僕は画面に映る自分たちの顔の間に、もう一つ、あの女の顔が映り込んでいるのを見た瞬間、背筋が凍りついた。
今思えば、あの夜だけは現実離れしていた。
あの女が何者だったのか、今も分からない。
だが、あのニタァ〜と笑う顔だけは、今でもはっきりと脳裏に焼き付いている。
「その夜、僕たちは生きて店を出た。
ただ、それだけが救いだったのかもしれない。
」
仕事・学校の話:モニターの女が笑った夜――逆転の深夜コンビニ怪談
モニターの女が笑った夜――逆転の深夜コンビニ怪談
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