仕事・学校の話:深夜のコンビニで体験した、ちょっと不思議なお話

深夜のコンビニで体験した、ちょっと不思議なお話

🤝 親切 に変換して表示中
昔、田舎のコンビニでアルバイトをしていた頃の話です。

そのコンビニは、夜が深くなるにつれてだんだんとお客さんも減り、とても静かになっていきました。
僕は先輩と一緒に、バックルーム(従業員の休憩室)で漫画や雑誌を読みながら、のんびりと過ごしていたものです。

ある夜のこと、いつものようにお菓子を食べながら、先輩と他愛もない話をしていました。

仕事といえば、たまに店内の様子をモニターで確認するくらい。
パン類が届く早朝までは、本当にゆったりした時間が流れていました。

そのモニターは4分割になっていて、レジが2箇所、食品棚、本棚の様子が映し出されていました。
ふと画面を見ると、本棚のところに女の人が立っているのが見えました。

腰まである長い髪の女の人です。

―おかしいな、チャイム鳴らなかったぞ

と先輩が不思議そうに言いました。
ごくまれに自動ドアのチャイムが鳴らないこともあったので、その時は特に気にせず、会話を続けていました。

しかし、女の人はずっとその場から動きません。
本を手に取って読むわけでもなく、ただじっと本棚を見つめているだけです。

―おい、こいつ万引きするつもりじゃないか

と先輩が言いました。
なんとなく違和感を覚える雰囲気の女性だったので、僕も無言で頷きました。

二人で挟み撃ちにして様子を見よう、ということになり、バックルームを出ます。

先輩はレジ側から、僕はバックルームの出入り口から本棚へと向かいました。

冷蔵棚の横を通り、本棚の島に近づいていきます。
本棚はガラス窓に面した場所です。

本棚に到着すると、渋い顔をした先輩と鉢合わせになりました。
ところが、そこには誰の姿もありませんでした。

絶対に挟み撃ちにしたはずなのに……なんだか不思議な気持ちです。

その時、トイレの方から水を流す音が聞こえてきました。

―何だ、トイレに行ったのか

と先輩が言い、僕たちはひとまずバックルームへ戻りました。

しかし、モニターを見ると、二人とも思わず固まってしまいました。

さっきと全く同じ場所で、女の人が本棚を見つめているのです。

早い……早すぎる。
トイレから戻るには、どう考えても僕たちが先に本棚に着いていたはずです。

しかも、同じ格好で本棚に向かっているその姿は、どこか異様でした。

もしかすると、モニターが過去の映像を映しているのかもしれない。
そう思いながら、先輩と顔を見合わせ、もう一度バックルームを出ました。

今度も挟み撃ちの形で本棚へ向かいます。
しかし、やはりそこに人の姿はありませんでした。

冷や汗を感じつつ、今度は何も言わずバックルームへ戻ります。

モニターを真っ先に確認しようとした時、先輩が画面に張り付くように見入っていました。

―あ! いなくなってるぞ

先輩の言葉通り、映像から女の人の姿は消えていました。

ほっとしたのも束の間、僕はなぜか全身に悪寒を感じました。

先輩の横に顔を寄せ、モニターをよく見ようとしたその時です。

―待て、動くな

先輩が、低く緊張した声で言いました。

反射的に「は?」と僕はつぶやきました。

先輩はモニターを中腰で覗き込んだまま、じっと動かずにいます。
目だけが動き、僕の目と合いました。

先輩の顔色がとても悪い。
何か嫌なものでも見たのかと思い、姿勢を戻そうとしたその時、

先輩の目つきがさらに鋭くなりました。

―いいか、絶対に振り向くなよ。
いま

またも押し殺した声で先輩が言います。

なぜだろう、と思いながら、僕はもう一度モニターを見ました。

すると、画面の反射に自分と先輩の顔が映っているのが見えました。

その真ん中に……もう一つ、女の人の顔が映っていたのです。

僕は悲鳴をこらえ、固まってしまいました。

じっと我慢すること数分、女の人は何かを呟いて、すっと離れていく気配がしました。

そしてさらに1分ほど経って、

―もういいぞ

と先輩に言われ、やっと息をつきました。

おそるおそる振り返ると、そこには誰もいませんでした。

心臓の音だけがやけに大きく聞こえます。
僕はモニターが置かれているテーブルに手をつきました。

―ここって、なんか出るんかなぁ

と先輩は少し力の抜けた声で言いました。

僕も脱力感を滲ませながら、先輩に同意します。

―そうですね

しかし、先輩が音を立ててテーブルから少し離れたので、何気なくそちらを見ました。

先輩の見開かれた目線は、はっきりとモニターを見ていました。
僕もその視線をたどり、画面を確認します。

モニターに映っていたのは、さっきの女の人がカメラの方を向き、大きく口を開けてニタァ〜っと笑っている姿でした。

その瞬間、先輩と僕は何も言わずに、二人で裏口から飛び出すように逃げ出しました。

店に戻ったのは、夜が明けて配達のトラックがやってくる頃です。
店内には、当然ですが誰もいませんでした。

今ではまるで作り話みたいに思えるかもしれません。
でも、僕がこんな経験をしたのは、この時だけだったのです。
読了
スワイプして関連記事へ
0%
ホーム
更新順
ランダム
変換
音読
リスト
保存
続きを読む

コメント

まだコメントがありません。最初のコメントを投稿してみませんか?

記事要約(300文字)

ダミー1にテキストを変換しています...

0%
変換中