怖い話:夕暮れの空家と、あの日の約束

夕暮れの空家と、あの日の約束

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○回想・知り合いのおばちゃん家・リビング(夕方)

N:あれは、小学校低学年の頃だった。
両親の用事で、俺は一晩だけ知り合いのおばちゃんの家に預けられることになった。

○同・玄関(夕方)

(カメラ、少年の背中を追う)

SE:柴犬がリードを引っ張る音

タクマ(8・シャイな少年):(不安げに)…おばちゃん、犬の散歩、行ってきてもいい?

おばちゃん(50代・世話好き):(笑顔で)いいよ、暗くなる前に帰ってきなさいね。

タクマ:(小さく頷く)

(タクマ、柴犬とともに外へ)

○見知らぬ町・路地(夕方)

N:見慣れない町。
俺は犬と一緒に、どこまででも歩いていった。

SE:足音、遠くで子どもの声

(タクマ、キョロキョロと周囲を見回す)

タクマ:(心の声)どこだ、ここ…。
全然わかんない。

(犬が草むらをクンクン嗅ぐ)

タクマ:(犬に向かって、困り顔で)お前、道わかる?

(犬、知らんぷり)

N:シャイだった俺は、誰にも声をかけられなかった。

(空が徐々に赤く染まる)

○見知らぬ町・空家の前(夕暮れ)

(タクマ、犬を引きずりながら歩く)

SE:風の音が強まる

(犬、急に立ち止まる)

タクマ:(驚いて)えっ…どうした?

(犬、うんともすんとも動かない)

タクマ:(犬を抱えようとするが、異様に重い)(顔をしかめて)なんでこんなに重いんだよ…。

(右手に、草に覆われた二軒続きの空家)

N:当時、昆虫集めに夢中だった俺は、つい草ぼうぼうの庭に足を踏み入れてしまった。

(タクマ、虫かごを手にして草をかき分ける)

SE:草を踏む音

(辺りが一気に暗くなる)

○空家・庭(夜)

(タクマ、ふと顔を上げる)

(雨戸が閉まった窓。
その一つ、玄関の向こう側の窓だけが少し開いている)

(BGM:不穏な音色が静かに流れ始める)

(その窓から、女が顔を出している)

N:その女の顔は…両目を閉じたまま、ゆっくり左右に揺れていた。

タクマ:(凍りつく)

(心の声)…な、なんだあれ…。

(声も出せず、腰を抜かす)(目を見開き、震える)

SE:心臓の高鳴り

(女の顔、無表情で揺れ続ける)

タクマ:(喉を震わせて)…っ!

(突然、立ち上がり、一目散に空家を飛び出す)

○おばちゃん家・玄関(夜)

(タクマ、半泣きで帰宅)

SE:ドアが乱暴に閉まる音

おばちゃん:(驚いて、駆け寄る)どうしたの!? 何があったの!!

タクマ:(息を切らして、涙目で)おばちゃん…あの家、変な女が…窓から…!

おばちゃん:(顔色を変え、怒りを抑えて)何てことしてきたの!まったく…!

(間)

(おばちゃん、無言でバリカンを取り出し、タクマの頭を丸坊主にし始める)

タクマ:(戸惑い、動けず)

○おばちゃん家・リビング(夜)

(知らないおじさん(60代・厳めしい男)がやってくる。
手には御札のような紙)

SE:ドアが開く音

おじさん:(低い声で)こっちに来なさい。

N:知らない呪文のような言葉を聞かされる。

タクマ:(怯えながら、じっと座る)

○おばちゃん家・リビング(夜・続き)

SE:電話の呼び出し音

(両親が慌てて駆けつける)

母:(心配そうに)タクマ、大丈夫!? 何があったの?

父:(おばちゃんに向かって)一体、何が…

N:その夜は、大人たちが慌ただしく動き回る中、俺だけがぽつんと取り残されていた。

(画面暗転)

○現在・タクマの部屋(夜)

(タクマ(18)、机に向かい、遠くを見つめている)

N:それ以来、俺はおばちゃんの家に一度も行っていない。
犬も、あの日から帰ってこなかった。

タクマ:(心の声)…ごめんな、おばちゃん。
あの女、あれは一体、何だったんだろう。

(BGM:切ない曲調に変わる)

(そっと目を閉じるタクマ)

(フェードアウト)
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