初恋の相手を失った女性が語る後悔と再生――「なぜ真実を言ってくれなかったのか」

■初恋の人の死が残した深い問い――20代女性、2年越しの心境を語る

「もう一度、会って優しくしたい」。
東京都内に住む会社員のAさん（仮名・28歳）は、初恋の相手を20代前半で亡くした経験について、記者の取材に心情を明かした。
彼女が人生で初めて交際した男性は、1年前に肝臓がんで亡くなっていたことが、彼の友人からの連絡で判明した。
Aさんは「なぜ彼は、病気の事実を私に隠したのか」と、2年が経った今も自問を続けている。

■「別れてほしい」突然の別れの言葉

Aさんによると、彼との交際は10代の終わりから始まった。
若さゆえの未熟さもあり、「ワガママばかりだった自分を後悔している」と振り返る。
しばらくして、彼から「別れてほしい」と告げられた際、Aさんは強がりで「いいよ」と返答した。
その後、半年が過ぎたころ、彼から電話があったが、「彼氏ができて幸せ」と嘘をついてしまったという。

■知らされなかった病、そして突然の訃報

彼との別れから1年後、彼の友人から連絡が入り、彼が肝臓がんで亡くなっていたことを知らされた。
Aさんによれば、彼は一周忌を迎えるにあたり、「自分の死をAさんに知らせてほしい」と遺言を残していたという。
彼の遺書には「こんな別れ方しかできなくてごめん。
幸せになってほしい。
愛してる」と記されていた。

■残された後悔と問い

Aさんは「なぜ一人で全てを抱え込んだのか」「なぜ一緒に病気と闘わせてくれなかったのか」と、今も答えのない問いを抱えている。
当初は自分を責め、彼を責める気持ちもあったという。
しかし2年が経ち、徐々に彼の優しさや配慮を理解できるようになった。
「でも、まだ感情が追いつかない。
一生、問いかけ続けると思う」と話す。

■専門家「遺された側もケアが必要」

グリーフケア（喪失体験の心理的ケア）に詳しい臨床心理士・鈴木真理子氏は、「大切な人が真実を隠して亡くなった場合、遺された側は強い喪失感と後悔を抱きやすい。
時間をかけて自分の感情と向き合うことが大切」と指摘する。

Aさんは「もう一度だけでも、彼に会って自分の気持ちを伝えたい」と語った。
突然の別れや真実を知らされないことは、誰にでも起こりうる。
こうした体験に向き合うには、周囲の理解と支援が不可欠だと言えるだろう。