○中学校・教室(春・昼)
N:私がその先生に出会ったのは、中学一年の春だった。
(教室のドアが開き、明るい笑顔の先生が入ってくる)
SE:ドアが開く音
登場人物
・ワタシ(12・内気な新入生)
・タカハシ先生(30代・明るく熱血漢)
タカハシ先生:(大きな声で、笑顔)
「おはよう!今日からみんなの担任をするタカハシだ。
よろしくな!」
(クラス中がざわめく)
ワタシ:(心の声・目を見開いて)
(こんな元気な先生、初めてかも…)
N:先生は明るく元気で、全力投球。
怒るときは本気で、机を叩いて声を張り上げる。
(SE:机を叩く音)
(ワタシ、驚いて目を丸くするが、次第に先生に惹かれていく)
(BGM:軽やかな曲)
N:―この先生が担任で良かった―
そう思えた出会いは、人生で数少ないものだった。
(画面暗転)
○中学校・廊下(秋・昼)
N:中学一年の後半、私はいじめに遭った。
(ワタシ、下を向いて歩いている。
周囲の生徒たちがヒソヒソと話す)
SE:小さな笑い声、ヒソヒソ声
ワタシ:(心の声・苦しげに)
(誰にも言えない…。
どうせ、また同じことの繰り返し…)
(廊下を歩くワタシ、教室の前で立ち止まり、ただ静かに時間が過ぎるのを待つ)
(BGM:切ない曲調に変わる)
○中学校・職員室前(夕方)
(ワタシ、先生に呼び止められる)
タカハシ先生:(静かに、優しい表情で)
「ちょっと、話せるか?」
(ワタシ、黙って頷く)
○中学校・職員室(夕方)
(先生とワタシが机を挟んで座る。
先生の表情はいつもと違い、真剣)
タカハシ先生:(声を落として)
「……いじめのこと、聞いたよ」
(ワタシ、驚いて一瞬息を呑む)
ワタシ:(心の声・諦めて)
(もう隠せない…)
(ワタシ、震える声で全てを話し始める)
タカハシ先生:(眉をひそめ、時折拳を握りしめながら、真剣に聞く)
SE:沈黙
タカハシ先生:(怒りを抑えて)
「大体、わかった。
……彼らには、がっつり言っておかなきゃな」
(ワタシ、ほっとした表情)
ワタシ:(心の声)
(“話し合い”じゃない。
先生が本気で守ってくれる…)
(間)
タカハシ先生:(ふと、静かに)
「……何で、黙ってたの?」
(ワタシ、答えられず目を伏せる)
(長い沈黙)
タカハシ先生:(涙をこらえて、優しく)
「気づいてあげられなくて、ごめんな」
(ワタシ、顔を上げると先生の目に涙が浮かんでいる)
SE:静かな呼吸の音
ワタシ:(声を詰まらせて、心の声)
(違う、先生のせいじゃない…。
私が、言えなかっただけなのに…)
(ワタシ、何も言えず俯く)
(カメラ、ゆっくり先生の目の涙にズームイン)
N:あの涙は、今でも忘れられない。
(BGM:静かに高まり、フェードアウト)
○中学校・教室(数日後・昼)
(タカハシ先生、加害者の生徒たちに厳しく叱る姿)
SE:机を叩く音
加害者生徒たち:(しゅんとしてうつむく)
N:いじめは、あっという間に解決した。
○中学校・昇降口(下校時刻)
(ワタシ、下校しながらタカハシ先生とすれ違う)
タカハシ先生:(小声で)
「親御さんには、言わないからな」
ワタシ:(小さく微笑む)
N:その気遣いが、何より嬉しかった。
(画面暗転)
○中学校・廊下(春・新学期)
N:中学二年に進級してからは、先生とはほとんど接点がなくなった。
(ワタシ、廊下ですれ違うタカハシ先生を見つめる)
(間)
ワタシ:(胸に手を当てて、心の声)
(…先生が見せた、あの涙。
それは、今も私の中に残っている)
(BGM:静かに流れ始める)
○卒業式・体育館(春・昼)
(ワタシ、卒業証書を手にして、遠くのタカハシ先生を見る)
N:きっとこれからも、ずっと忘れることはない。
(ワタシ、優しく微笑む)
(フェードアウト)
切ない話:あの日の涙、忘れられない春〜教師と生徒の約束〜
あの日の涙、忘れられない春〜教師と生徒の約束〜
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