同じ誕生日に出逢った夜――運命を試されたふたり

○居酒屋・個室（夜）

SE：グラスが触れ合う音、賑やかな笑い声

N：26歳の夜。
偶然、隣に座った彼女との出会いが、僕の運命を変えた。

（カメラ、ゆっくり二人にズームイン）

登場人物：
・ユウタ（26・会社員・少し人見知り）
・ミサキ（26・大人っぽい雰囲気、時折あどけない笑み）

ユウタ：（目が合い、慌てて目をそらす）
「あ…あの、初めまして。
ユウタです。
」

ミサキ：（微笑みながら）
「ミサキです。
よろしくお願いします。
」

（BGM：優しいピアノの旋律）

ユウタ：（グラスを持ちながら、少し緊張して）
「大人っぽいですね…でも、笑った顔、なんか可愛いです。
」

ミサキ：（照れて笑う）（髪を耳にかける）
「よく言われます。
でも、実は同い年なんですよ。
」

ユウタ：（驚いて）
「え、ほんとに？僕、今日誕生日なんです。
」

ミサキ：（目を丸くして）
「え！？私も今日なんです！」

（間、二人、驚きと高揚で見つめ合う）

N：同じ歳、同じ誕生日。
何かが始まる予感がした。

（画面暗転）

○カフェ（後日・昼）

SE：カップを置く音

（BGM：静かに流れる）

ユウタ：（少し緊張しながら）
「…誘ってくれて、ありがとう。
」

ミサキ：（コーヒーを口に運び、ゆっくりと）
「あの…ちょっと、言わなきゃいけないことがあって。
」

ユウタ：（真剣にミサキを見る）

ミサキ：（目を伏せて）
「私、バツイチなんです。
」

（間）

ユウタ：（すぐに笑顔で）（真っ直ぐに）
「それ、全然気にしないです。
…僕と付き合ってほしい。
」

（間、ミサキは驚き、そしてゆっくりと微笑む）

ミサキ：（涙ぐみそうな目で）
「…ありがとう。
」

（BGM：少し明るくなる）

○公園・ベンチ（3回目のデート・夕方）

SE：子どもたちの声、風の音

（長い沈黙）

ミサキ：（申し訳なさそうに）
「ユウタくん、ごめん。
もうひとつ、言わなきゃいけないことがあるの。
」

ユウタ：（優しく頷く）

ミサキ：（声を震わせて）
「私、一人、子どもがいるの。
…ユウタくんと会う日は、親に預けてる。
」

（間）

ユウタ：（深呼吸して、微笑む）
「…話してくれて、ありがとう。
子どもとも、遊んでみたいな。
」

（ミサキ、驚きと安堵が入り混じった表情でユウタを見る）

○ミサキの自宅・リビング（休日・昼）

SE：子どもの笑い声

ユウタ：（床に座り、子どもとブロック遊び）（楽しそうに笑う）

ミサキ：（二人を見つめて、そっと微笑む）

N：3人で過ごす時間は、想像以上に温かくて、幸せだった。

○ユウタ自宅・寝室（夜）

（BGM：切ない曲調に変わる）

ユウタ：（窓の外を見つめて、独り言のように）
「…本当に、このままでいいのか。
」

（胸に手を当てて、苦しそうに俯く）

N：血の繋がらない子を、本当に愛せるのか。

もし自分の子どもが生まれたら、平等に愛せるのか――

（間、静寂）

○ミサキ自宅・玄関（数日後・夜）

SE：玄関ドアの音（静かに閉まる）

（BGM：静かにフェードアウト）

ユウタ：（目を伏せて、声を詰まらせて）
「…ごめん。
僕には、やっぱり無理かもしれない。
」

ミサキ：（涙をこらえて、優しく微笑む）
「…うん。
わかった。
ありがとう、正直に言ってくれて。
」

（間、二人、見つめ合う）

（ミサキ、ゆっくりと背を向けて去っていく）

SE：遠ざかる足音

（画面暗転）

○ユウタ自宅・リビング（数年後・夜）

（BGM：静かな余韻）

ユウタ：（遠くを見つめて）（独り言）
「…もし、あのとき、もう少し強くなれていたら。
」

N：出会うには、少しだけ早すぎたのかもしれない。

もし、子どもごと愛せる自分に、もっと早くなれていたなら――

（ユウタ、そっと目を閉じる）

（BGM：静かに消えていく）