○海辺・岩場(早朝)
(うっすら朝日が射し込む。
波音が静かに響く)
N:ある日、趣味の海釣りに出かけた。
沖ではなく、地元で“穴場”と噂される岩場。
そこは、知る人ぞ知る、釣り人だけが集う特別な場所だった。
(青年が釣り道具を抱え、慎重に岩場を歩く)
○同・岩場(午前)
(青年、釣り竿を準備し、糸を垂らす)
青年(30・釣り好き・少し神経質そうな雰囲気):
「…よし、今日はここで粘るか」
(苦笑しながら、岩に腰掛ける)
N:水面まで切り立った崖。
その下には、深く青い海が広がっていた。
(青年、岩の上から身を乗り出し、水面を覗く)
青年:(心の声)(少し不安そうに)
「…こんなに高いと、落ちたら洒落にならないな」
○同・岩場(午後)
(時間が経ち、日が傾き始める)
N:平日の静けさ。
午前も午後も、釣果は芳しくない。
青年:(ため息交じりに)
「全然釣れないなぁ…やっぱり、こういう日もあるか」
(竿を置き、ぼんやり海を見る)
(SE:風の音が強くなる)
○同・岩場(夕方)
(陽が沈み始め、海面が赤く染まる)
N:帰ろうかと思い始めた、その時だった。
(青年、水面下に大きな影を見つける)
青年:(驚いて身を乗り出す)
「…え?」
(目を凝らし、影を追う)
青年:(心の声)
「雲の影…?いや、違う…あれは…イカの群れ?」
(急いで釣り糸を投げる)
(SE:糸が水面に着水する音)
○同・岩場(直後)
(糸がピンと張り、竿が激しくしなる)
SE:ギギギギギ…(リールの音)
青年:(驚いて、必死にリールを巻く)
「うわっ、なんだこれ…!?」
N:強い力。
不規則な引き。
手に伝わる感覚が、いつもと違う。
(青年、体を使い、竿を岩の隙間に固定)
青年:(息を切らせて)
「…重い…大物か?」
(岩の隙間に竿を固定し、群れが見えた方向を覗き込む)
○同・岩場(不穏な空気)
(青年、水面下に目を凝らす)
N:だが、それは“イカ”ではなかった。
(青年、目を見開く)
(SE:心臓の鼓動が高鳴る音)
(カメラ、青年の目線で水中を映す)
(無数の白い“人の手”が、糸にしがみつき、必死に岩場に向かって這い上がろうとしている)
青年:(声を震わせて、呆然と)
「…嘘だろ…?」
(一瞬、全身で糸にしがみつく“男”と目が合う)
(男、苦しげな顔で青年を見上げる。
背後には、悔しそうな顔、怒りに満ちた顔。
次々と浮かび上がってくる)
(青年、動けず、絶句)(長い沈黙)
○同・岩場(衝撃)
SE:バキッ!!
(岩に固定していた竿が外れる)
(竿、青年の手をすり抜け、海に向かって落ちていく)
SE:ザブン!
(竿が海に飲まれる)
N:彼らは、釣り上げられようとしていたのではない。
私を、海の底へと引きずり込もうとしていたのだ。
(青年、我に返り、慌てて道具をまとめる)
青年:(息を荒げ、足早に岩場を離れる)
○車内(帰り道・夜)
(青年、ハンドルを握り締め、震えた手で運転する)
青年:(心の声)(震えながら)
「何だったんだ、あれは…?」
(携帯で検索する青年)
N:後で知った。
その崖は自殺の名所だったという。
○自宅・リビング(夜)
(釣り道具を片付ける青年。
窓の外を見つめる)
N:それ以来、岩場で釣りをすることは、なくなった。
(BGM:静かにフェードアウト)
怖い話:崖の釣り場に現れた“影”〜深き海と人の手の記憶〜
崖の釣り場に現れた“影”〜深き海と人の手の記憶〜
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