冬休み、挽肉工場に消えた真実～バイト仲間と消えた青年の謎～

○精肉工場・作業場（朝）

N：冬休み――僕はバイクを買うため、精肉工場のアルバイトに応募した。

（作業場、白い制服に身を包んだ学生たち。
ベルトコンベアの前で単調な作業が続く）

SE：肉を詰める音、機械の稼働音

○同・作業場（数日後）

（カメラ、バイト仲間の顔を順に映す。
ひときわ静かな青年「内田（17・小柄で内向的）」がいる）

N：内田――別の学校から来たらしい、どこか影のある少年。

○休憩室（昼）

（バイト仲間たちが机を囲む。
主人公「佐藤（18・普通の男子高校生）」が飲み物を飲む）

山田（18・お調子者）：「なあ…内田ってさ、なんか暗いよな」

佐藤：（苦笑しながら）「まあ、そうかもな…」

田中（19・リーダー格）：「真面目なのに、作業遅いし。
ああいうの、いつかやらかすぞ」

（みんな、内田の方をちらりと見る）

N：誰も、彼に声をかけようとしなかった。

○精肉工場・作業場（夜）

（内田、ひとり黙々と作業。
終業のチャイムが鳴ると、無言で帰っていく）

SE：チャイムの音

○同・作業場（翌朝）

（バイト仲間が集まるが、内田の姿がない）

佐藤：（首をかしげて）「あれ、内田は？」

山田：「今日は休みじゃね？」

○精肉工場・事務室（数時間後）

（社員「鈴木（35・責任感が強い）」がバイト全員を前に立つ。
表情は沈痛）

SE：重い扉が閉まる音

鈴木：（間を置いて）「皆さんに…大事なお話があります」

（みんな、ざわざわし始める）

佐藤：（不安そうに）「何だろう…」

N：その時、場の空気が変わった。

鈴木：（声を低くして）
「本来、アルバイトに言うべきことではありませんが…取引先から苦情が来ました」

（沈黙が落ちる）

鈴木：（息を呑んで）「…出荷した挽肉に、猫の死骸が混入していたと」

（SE：誰かが息を飲む音）

佐藤：（凍りつく）（心の声）まさか…内田…？

田中：（声を潜めて）「…マジかよ」

山田：（顔を青ざめさせて）「そんなこと、あるわけ…」

○回想・作業場（昨晩）

（内田が一人、作業場の影に消える）

N：僕の脳裏に、昨晩の内田の姿が浮かぶ――。

○精肉工場・事務室（現実に戻る）

鈴木：「昨晩、機械をすべて調べました。
確かに…動物の体毛や、普段使わない肉が混じっていました」

（社員の視線がバイト全員をなめる）

佐藤：（目を伏せて）（心の声）僕じゃない、でも…なぜか動揺が走る。

鈴木：（優しく、しかし厳しく）
「あなたたちが関わっていないことは、分かっています。
この件は社員に任せてください」

（場の緊張が一気に緩む）

SE：誰かが小さく息をつく音

鈴木：「誰かに何か聞かれても、『分かりません』とだけ答えてください」

○精肉工場・更衣室（その後）

（皆、無言で着替えている）

山田：（小声で）「…結局、内田どうしたんだ？」

田中：「さあな、誰も知らねえよ…」

○自宅・自室（夜）

（主人公、部屋で給与明細を見つめる）

N：その後、「訳アリの肉」がどうなったのか、内田がどうなったのか…誰も知らなかった。

（画面、写真立てのバイクの写真にゆっくりズームイン）

N：今も、あの冬休みを思い出すと、背筋が冷たくなる。

（BGM：不穏な余韻が残る音楽、フェードアウト）