「どうやら我々が出荷した挽肉の中に、猫の死骸が混入していたそうです。
」
社員が深刻な面持ちでそう告げた瞬間、私は凍りついた。
頭の中には、突然バイト現場から姿を消した「内田」の顔が真っ先に浮かんだ。
まさか、あいつが――。
社員は続けて言った。
「昨晩、機械を調べたら、確かに動物の体毛や、入っているはずのない肉の混入が見つかりました。
」
その場にいた全員の顔が強張り、誰もが自分の無関係を悟らせようと必死に平静を装った。
だが、心の奥底では皆、あの「いじめられっ子の内田」が怪しいと感じていたに違いない。
なぜなら、つい前日、内田は理由も告げずにぱったりと工場からいなくなっていたからだ。
話は、その数日前に遡る。
冬休み、私はバイクを買うために精肉工場でアルバイトをしていた。
そこはコンビニの肉まん用に大量のひき肉を生産する現場で、流れ作業に従い、学生バイトが各自の持ち場で黙々と働くのが日常だった。
その中で、内田は異質な存在だった。
別の学校から来ていて、無口で、他のバイトともほとんど関わらず、仕事が遅かった。
仲間内では「あいつは暗い」「いつか問題を起こす」と噂されていた。
そんな彼が、突然姿を消したのである。
そして、取引先からの苦情が工場に舞い込んだ。
「ひき肉に猫の死骸が混入していた」と。
社員は我々バイトに「あなた達が関わっていないのは分かっています。
この件は社員に任せてください」と言い、私たちは表向き平静を装った。
しかし、あの夜、誰もが心の中で「内田がやったのではないか」と疑っていた。
そんな空気のまま、冬休みは終わり、私は無事に給料を手にした。
今でも思い出すと背筋が寒くなる。
あの「訳アリの肉」がその後どうなったのか、内田がどこへ行ったのか、あの時一緒に働いていた仲間たちでさえ、誰一人として真相を知らないままだ。
もしかしたら、あの事件の真実は、今も工場のどこかに封印されているのかもしれない――。
仕事・学校の話:「猫の死骸が混入した挽肉――冬休み工場バイトの真相」
「猫の死骸が混入した挽肉――冬休み工場バイトの真相」
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