■【起】〜冬休み、精肉工場に集う若者たち〜
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学生時代の冬休み、私はバイクを買うために精肉工場でアルバイトを始めた。
工場はコンビニの肉まん用のひき肉を大量生産しており、連休になると学生バイトが補充要員として集められていた。
決められた流れ作業に従い、皆が各自の持ち場で黙々と働く中、私はできるだけ多くシフトに入り稼ぐことを目指していた。
そんな中、一人異彩を放つ学生がいた。
名札には「内田」と書かれており、彼は別の学校から来ているようだった。
■【承】〜静かな異物、「内田」という存在〜
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内田はどこか影のある青年で、同期のバイトたちともほとんど話さず、与えられた作業だけを黙々とこなしていた。
仕事が終わると、誰よりも早く静かに帰っていく。
バイト仲間の間では、彼について「暗い」「真面目なのに仕事ができない」「そのうち問題を起こすだろう」といった噂がささやかれていた。
工場の単調な日々の中で、内田の存在だけが妙に浮いて見えた。
それでも冬休みのバイトは日々平穏に過ぎていき、私も他の仲間たちも、それぞれの目的のために労働に励んでいた。
■【転】〜消えた内田と、工場に走る戦慄〜
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ある日、突然内田の姿が消えた。
理由もわからぬまま、私たちバイト全員は社員に呼び出される。
社員は深刻な表情で言った。
「本来アルバイトに話すことではないのですが、取引先から苦情が来ました」。
場がざわつく中、社員の口から衝撃的な事実が告げられる。
「どうやら我々が出荷した挽肉の中に、猫の死骸が混入していたそうです」
背筋が凍る思いで私は内田の顔を思い出した。
まさか、あいつが――。
社員は続けて「昨晩機械を調べたら、実際に動物の体毛や、混入しているはずのない肉が見つかった」と話す。
社員は「皆さんの関与は疑っていません。
この件は社員に任せてください」と言い、場の緊張はようやく和らいだ。
■【結】〜消えた真相、消えない不安〜
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その後、特に大きな騒ぎになることもなく、私たちバイトは誰からも何も聞かれることなく冬休みの仕事を終えた。
給料も無事に手に入れ、日常が戻ったかのように見えた。
しかし、今でも思い出すと背筋が寒くなるのは、あの「訳アリの肉」がその後どうなったのか、「内田」がどうなったのか、誰も知らないまま時が過ぎてしまったということだ。
あの冬、工場の片隅に残された闇だけが、私の記憶の中で静かに息をひそめている。
仕事・学校の話:冬休みの精肉工場で出会った「内田」と、闇に消えた真実
冬休みの精肉工場で出会った「内田」と、闇に消えた真実
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