新たな一歩と忘れられないスプーン

私は不妊治療の末にようやく産まれた子供だったと聞いています。

幼い頃から両親に大切にされ、愛情たっぷりに育ちました。

もちろん叱られることもありましたが、何不自由なく過ごせました。

両親にとっては年を取ってからの子供だったからかもしれません。

家族は本当に仲良しで、私は両親が大好きでした。

そして私にも、好きな人ができました。

学生時代から何人か付き合ったけれど、初めて結婚を意識した人でした。

しかし彼とは遠距離恋愛。

結婚を考えると、両親や友達と離れることが不安でした。

バレンタインの日、彼から逆チョコと共にプロポーズされました。

予感はあったけれど、その場で「はい」と即答できませんでした。

次のデートまでの2週間、悩んだ末、彼と結婚する決意をしました。

プロポーズされた時の嬉しさと、彼への愛情があったからです。

結婚を決めてからは、両親や友達とできるだけ時間を過ごしました。

同時に少しずつ荷物を整理し、準備を進めました。

離れることが寂しいと感じましたが、新たな生活が始まるのです。

そして結婚式の日を迎えました。

式場では緊張しつつも、あっという間に時間が過ぎていきました。

披露宴では、両親へのサプライズを用意していました。

彼のお母様から彼へのラストバイトの後、私の番が来ました。

母親に内緒で持ってきた自宅のスプーンを取り出すと、母は驚いた様子。

母にスプーンを渡し、ケーキをすくってもらいました。

私がそれを食べ、母は涙ぐんでいました。

スプーンは式場で洗ってもらい、母が持ち帰りました。

今も実家には、その思い出のスプーンがあります。

沢山の思い出と共に。