「早く迎えに来て」―後輩への秘めた想いから始まる恋の逆転劇

「それなら僕にもチャンスありますか？」

彼がそう言ったあの夜から、私は彼の成長を見守りながら、心の中で「早く迎えに来て」と願い続けている。

数カ月前、彼と二人で飲みに行った帰り道、大衆居酒屋の温かい灯りの下、突然「明莉さんは彼氏いるんですか？」と聞かれた。
まだ私の中で、彼はただの後輩――そう思っていたのに、彼の真っ直ぐなまなざしを前に、返事に迷った。
「いないよ」とだけ答えると、彼は続けて「まだ教わることばかりで情けないですが、いつか明莉さんに頼ってもらえる男になりますから、それまで待っていてくれませんか」と言ったのだ。

それまでの私たちは、先輩後輩として徐々に距離を縮めていた。
最初はどう接していいか分からず、お互いに緊張していた。
仕事を通じて少しずつ打ち解け、やがて二人で飲みに行くような仲にまでなった。
振り返れば、その時間こそが、彼が私の心に入り込んでいた証だったのかもしれない。

すべての始まりは、社会人3年目の春。
新人教育を任された私の前に現れたのは、ハキハキとした好青年だった。
最初の出会いで感じた戸惑い。
あの時は、まさか自分がこんなふうに彼を想うことになるとは、夢にも思わなかった。

今、彼の成長を見るたびに心が喜びで満たされる。
けれど、まだ私は待っている。
「いつか迎えに来て」と、胸の内で繰り返しながら。
彼に頼るその日まで、私はずっと彼の背中を見守り続けるのだろう。