涙が止まらなかった、あの小さな勇気の瞬間から全ては始まった

涙が止まらなかった。
小さな子供たちが、目の見えない友達の手を引き、氷の袋を抱えて店を出ていく、あの瞬間。
私はその光景に心を打たれ、子供たちの勇気と優しさに、思わず涙をこらえきれなかった。

しかし、その感動の裏には、思いもよらない出来事があった。
実は数分前、私は子供たちの冷たい言葉に憤りを感じていたのだ。
「お前、目が見えないんだろ？素直に親が帰るまで、家で大人しくしてろよ。
バカだなぁ」――そんな言葉が、入口に立つ小さな常連客へ向けられたのだから。

その直後、私は何か言おうとした。
けれど、次の瞬間、彼らは手のひらを返すように「ほら、先に入れよ。
ドア開けとくから」と言い、目の見えない彼の手を取ってくれた。
私は思わず動揺した。
人は見かけや最初の言葉だけでは判断できないのだ。

話はさらに遡る。
あの日、私は店の入口で目の見えない常連の少年が一人立ち尽くしているのを見つけた。
彼は普段、母親と一緒に来るのに、その日は一人だった。
理由を尋ねると、「お母さんが熱を出してるの。
だから水枕の氷を買いに来たんだ」と答えた。

彼が勇気を振り絞って外へ出てきたその日。
偶然通りかかった二人の子供が、最初は心無い言葉を投げかけたけれど、すぐに態度を変えて手を差し伸べた。
彼らは彼をレジまで連れて行き、氷を持ってきて、こう言った。
「いいよ、俺が払っとくよ！その代わり、君のお母さんが良くなったら一緒に遊ぼうな！」

私は会計を済ませる彼らの姿を見送りながら、胸の奥が熱くなった。
三年前にセイコーマートで働き始めてから、こんな小さな奇跡に立ち会えるとは思わなかった。

すべての始まりは、見えない困難に立ち向かった小さな勇気だった。
あの瞬間が教えてくれたのは、困っている人を助けようとする心は、時に子供たちのなかにこそ大きく育っているということ。
そして、最初の言葉や態度だけで人を決めつけてはいけないという、静かな真実だった。