小学生たちが示した共助の力――視覚障害児を支えた店先での出来事

視覚障害を持つ少年と、見知らぬ同年代の子どもたちが助け合う姿が、北海道内のコンビニエンスストア「セイコーマート」で目撃された。
2023年秋、札幌市内店舗の店員への取材で明らかになった。
誰もが日常的に利用する店舗で起きた、子どもたちの自発的な共助の行動が注目を集めている。

■ 視覚障害児を支えた小学生たちの対応

発端は、同店に週2〜3回ほど母親と来店する視覚障害のある小学生A君（仮名、8歳）が、ある日ひとりで店舗入り口に立っていたことだった。
A君は生まれつき目が見えず、白い杖を頼りに歩行している。
この日、A君は家族の体調不良により、氷を買いに一人で来店していた。

店舗スタッフBさん（30代、勤続3年）は、A君が戸口で戸惑っている様子に気付き、扉を開けようとしたという。
その時、同年代の小学生2人組が通りかかった。
最初、2人はA君に対し「目が見えないんだろ？家で大人しくしてろよ」といった心無い言葉をかけたが、直後に「ほら、先に入れよ」と態度を改め、A君の入店を手伝った。

■ 氷を買いに来た理由――子どもの優しさが連鎖

A君は「お母さんが熱を出しているので、水枕用の氷を買いに来た」と説明。
小学生2人は、A君をレジまで案内し、氷を手に取って会計をサポートした。
代金398円については「自分たちが払う。
その代わり、お母さんが良くなったら一緒に遊ぼう」と申し出たという。

その後、2人はA君の自宅まで同行。
一人が氷を持ち、もう一人がA君の手を引いて歩いた。

■ 店舗スタッフが見た「友情の芽生え」

店舗スタッフBさんは「当初は傷付く場面だったが、子どもたちが自然と助け合い、優しさが伝播する様子に心を動かされた」と振り返る。
店舗を訪れる小学生同士のやり取りには、地域社会における子どもたちの成長と共助の可能性が垣間見えた。

■ 専門家「共助の経験は将来の財産に」

子どもの発達支援に詳しい北海道大学教育学部の田中裕二准教授は「障害の有無にかかわらず、日常の中で助け合う経験は、他者理解と社会性を育む重要なきっかけになる」と指摘する。
「時には無理解な言動が見られるが、現場で変化や気付きが生まれること自体が成長の証。
こうした実体験が将来の共生社会の基盤となる」と話す。

■ 今後の展望――地域全体で支える仕組みを

セイコーマート店舗を舞台にした子どもたちの行動は、地域社会に小さな波紋を広げている。
今後、障害のある人も暮らしやすい環境づくりには、子どもたちだけでなく大人や店舗など多様な立場からのサポートが不可欠だ。
こうした日常の助け合いが、誰もが安心して暮らせる地域社会への第一歩となるのではないか。