「三度目の異世界は戻れない――運命が仕組んだ輪廻の謎」

突然、私は現実世界に引き戻された。
3年もの間異世界で過ごし、ようやくここで生きていこうと決めた矢先のことだった。
元いた世界ではたった一日しか経っていない。
会社からの不在着信が並び、無断欠勤で叱られるも、それ以上は何もなかった。
ただ、鏡に映る自分の姿だけが、すべてが夢ではなかったことを物語っていた。
白髪が増え、肌は焼け、皺が深く刻まれている――まるで数年分の時間が一夜で流れてしまったかのように。

なぜ私は戻されたのか。
あの世界で、私は少女の面倒を見ていた。
彼女の母親は亡くなり、村の人々に受け入れられ、私はそこに居場所を見出していた。
少女が成長し、やがて私がかつて心を寄せた女性と同一人物であることに気付いた。
さらに、その老婆が最初に出会った人物でもあったと悟ったのは、3年目のある日だった。
私はようやく生きる意味を見つけたつもりだった。

思い返せば、すべては「またあの世界に行きたい」と強く願った瞬間から始まっていた。
会社と家の往復、心身ともに疲れ果て、妻にも裏切られた私は、ついに願いが叶い、再びあの森へと引き込まれたのだ。
村にたどり着き、少女と出会い、彼女の家族の一員となった。
そこには現実にはなかった暖かさがあった。

しかし実は、その前にも私は二度、異世界を訪れていた。
初めては9歳か10歳の頃。
家庭は崩壊、学校でもいじめられ、絶望の中で夜の闇に誘われるように外へと出て行った。
そして気づけば見知らぬ森、そして小さな集落。
老婆が片言の日本語で迎えてくれ、その家族と数日を共に過ごした。
帰ってきたとき、現実ではほとんど時間が経っていなかった。
服の汚れや傷だけが、あちらの世界の現実を物語っていた。

二度目は23歳。
ブラック企業で消耗し、精神的に追い詰められていた時だ。
酒に酔い、またあの森に迷い込んだ。
かつての村にたどり着き、今度は若い女性に導かれた。
彼女に惹かれながら、私は約3ヶ月の間、村で暮らした。
だが突然現実に引き戻され、喪失感に涙した。

それでもなお、私は現実で生き続けた。
そして三度目、絶望の中で願った「あの世界に戻りたい」という思いが、再び私を森へと導いたのだ。

なぜ私は何度も異世界を訪れることができたのか。
その理由ははっきりしない。
ただ一つ思い当たるのは、最初に出会った老婆が、「つい最近、夫が亡くなった」と言っていたことだ。
その夫というのは、もしかしたら未来の――つまり、私自身なのではないか。
私はあの世界で、生を終え、またここに戻ってきたのかもしれない。

結局、もう二度と異世界へは行けなくなってしまった。
だが、あの世界に刻まれた傷が、今も私の体に残っている。
荒唐無稽な妄想かもしれない。
でも、未来に希望を持てない日々、あの世界の記憶だけが、私を支えている。