仕事・学校の話:消えた10億円と、夜明けの駅前――新人営業マンTの奇跡

消えた10億円と、夜明けの駅前――新人営業マンTの奇跡

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○営業部・オフィス(夕方)

(BGM:静かな緊張感)

N:1990年代、まだ携帯もポケベルもなかったあの頃――

(社員たちがそれぞれのデスクで仕事をしている。
時計が午後六時を指す)

山本(35・課長・冷静だが情に厚い):
(腕時計を見ながら、部下を見渡す)
「……Tはまだ戻ってないのか?」

佐藤(28・先輩・面倒見がいい):
(不安そうに)
「ええ、もう帰社予定を1時間くらい過ぎてます。


SE:電話のダイヤル音、数回

N:連絡手段は、電話しかなかった。

(社員たちが手分けして、次々と電話をかけていく)

鈴木(23・新人・心配性):
(受話器を置き、顔をしかめて)
「どこにもいません…。
喫茶店も、取引先も…」

山本:
(重い沈黙のあと、机を叩く)
「まずいぞ。
今日の集金、10億円の手形だったよな…」

(空気が凍る)

○事務所・夜(9時過ぎ)

(社員数人が残り、静まり返ったオフィス。
窓の外は真っ暗)

N:結局、その夜、僕たちは9時まで会社に残り、Tの行方を探し続けた。

山本:
(疲れた声で)
「Tの寮にも戻ってないらしい…」

佐藤:
(ため息をつき、椅子にもたれる)
「何か、事件に巻き込まれたんじゃ…」

SE:時計の音「カチ…カチ…」

(画面暗転)

○翌朝・営業部オフィス(朝)

(社員たちが集まり、顔は疲れている。
山本が机に座り、深刻な顔)

山本:
(沈黙の後、決意を込めて)
「……警察に捜索願を出すしかないかもしれん」

SE:ドアが開く音

(全員、振り返る)

T(22・新人・人懐っこい笑顔):
(何食わぬ顔で、カバンを持って入ってくる)
「おはようございます!」

(全員、絶句。
一拍置いて――)

佐藤:
(怒りと安堵が入り混じる)
「おい…何やってたんだよ!」

山本:
(カバンを指さして)
「手形は…?」

T:
(あっけらかんと、カバンから書類を取り出す)
「ちゃんと回収してきました!」

(空気が一気に緩む)

○オフィス・応接スペース(同)

(Tを囲んで、社員たち。
山本が真剣な表情で詰問する)

山本:
「正直に言え。
どこに行ってた?」

T:
(バツが悪そうに、頭をかく)
「あの…その…実は、いつも集金に行くとき受付の方にちょっと…」

佐藤:
(半分呆れ、半分笑いながら)
「何?まさか…」

T:
(照れくさそうに、笑顔で)
「昨日、ついに飲みに誘ったらOKもらいまして!それで…」

(全員、一拍置いて固まる)

SE:ドリフのような音

T:
(続けて)
「飲みすぎて、気づいたら知らない駅にいて…そのまま、駅前の花壇で寝ちゃいました」

(山本、力なく笑いながら)

山本:
「…お前は、本当に大物になるかもしれんな」

(みんな、苦笑と安堵の混じった表情)

N:あの日、僕は確信した。
Tは、きっと大物になる――

○数年後・営業部長室(昼)

(Tが堂々と営業部長として、部下に指示を出している)

N:今、Tは営業部長として、部隊を率いている。

(BGM:希望に満ちた音楽に切り替わる)

(Tが窓の外を見つめ、微笑む)

N:あの夜の騒動も、今となっては懐かしい思い出だ――

(フェードアウト)
読了
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