不思議な話:神隠しの祭囃子と赤い小袋――語り継がれる不気味な夜

神隠しの祭囃子と赤い小袋――語り継がれる不気味な夜

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■【起】〜山中の静寂に忍び寄る不可解な音〜
───────

ある夜、山中のテントで横になっていると、どこからともなく祭囃子がかすかに聞こえてきた。
静まり返った夜の闇に、不思議な音色が漂う。
風が遠くの音を運んでくるのかもしれないと自分に言い聞かせながら、旅人はやがて眠りに落ちていった。

翌朝、山を下り町に着くと、異様な騒ぎが広がっていた。
町の駐在さんに呼び止められ、昨夜の様子を詳しく尋ねられる。
町では若い女性が行方不明になり、住民たちは「誘拐か」「家出か」と騒然としていた。
そんな中、「神隠しだ」とささやく声が混じる。
ふと、祭囃子に狐のような鳴き声が混じっていたことを思い出すが、誰にも話さず汽車に乗って町を後にした。

■【承】〜汽車内での奇妙な邂逅〜
───────

汽車に揺られ、うとうとしていると、突然「もし…」と声をかけられた。
目を開けると、鮮やかな着物をまとった女性が恥ずかしそうに袖で口元を隠して立っている。

「これを、私の家族にお渡ししていただけますか?」

そう頼まれ、差し出された赤い錦の小袋を、寝ぼけていた旅人は思わず受け取ってしまう。
女性の顔をよく見ると、その目が妙に吊り上がっていて、不気味な気配を感じる。
返そうとすると、女は身をかわし、

「お願いいたします」

「いや、困る」

「お願いいたします」

と押し問答が続く。
だが次の瞬間、女の姿はふいにかき消えてしまった。
窓の外には鉄橋が映り、川の上を汽車が走っている―彼は「川は渡れないのか」とぼんやり考える。

■【転】〜正体を現した贈り物の恐怖〜
───────

女の消えた後、赤い小袋を開けてみると、中から人の歯がじゃらじゃらと音を立ててこぼれ落ちた。
恐怖に駆られ、すぐに捨てようとするが、それも躊躇われるほどの不気味さ。
旅人は結局、町の駐在所宛に小袋を郵便で送りつけ、なんとか安堵を得ようとした。

数年後、再びその山を訪れる機会があり、ついでにあの町に立ち寄る。
かつての駐在さんにそれとなく事件のことを尋ねてみると、「覚えていますよ。
嫌な事件でした」と語りながら、被害者の歯が犯人から送られてきたこと、そしてその残酷さを語る。

旅人の背中には冷たい汗が伝った。
自分がいつの間にか犯人扱いされていることに気付いたのだ。

■【結】〜消えぬ謎と町に残る違和感〜
───────

そそくさと町を離れようとしたその時、駐在さんは奇妙なことを口にした。
「でも、家族にその歯を見せたら、なぜか妙に納得されて。
町の人たちも急に捜査に協力しなくなってしまった。
町中に、なんともいえない嫌な雰囲気が残ったものです」と。

後に分かったのは、送られてきた歯には上下の犬歯だけが欠けていたということ。
残された謎と不安だけが、町と旅人の心に静かに残り続けていた。
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