踏切に消えた声 ～留守電に残された最後のメッセージ～

○A子の自宅・リビング（夜）

（部屋は静か。
A子（25・落ち着いた雰囲気）がソファに座り、携帯を見つめている）

SE：留守番電話の再生音

N：ニュースで耳にする、携帯電話に夢中で踏切事故に遭う悲劇。
それが、私の身近な人にも起きた。

○回想・踏切付近（夕方）

（B子（24・明るく元気な性格）が歩きながらスマホを操作している。
周囲は薄暗く、踏切は旧式で遮断機がない）

SE：電車の警笛が遠くから微かに響く

B子：（スマホに話しかけながら、少し焦った様子で）
「A子です……明日ね、ちょっと遅れそう……一時間くらい遅れ――」

SE：突然、大きな衝突音

（画面暗転）

○A子の自宅・リビング（夜・回想）

（A子が帰宅し、無造作に留守番電話を再生する）

SE：留守電からB子のメッセージ、途中で衝突音

A子：（驚いて、思わず立ち上がる）
「……え？」

（A子、動揺しながらB子の家に電話をかける）

○B子の自宅・玄関（夜）

（B子の母親が電話を取る。
A子の声が震えている）

A子：（声を震わせて）
「あの、B子さん……いらっしゃいますか？」

B子の母：（沈痛な声で）
「……ごめんなさい。
B子は、事故に……」

（長い沈黙）

○A子の自宅・リビング（夜）

（A子、電話を切った後、呆然と座り込む）

N：友達が死んでいく最後の声が入った留守番電話。
私は、それを消すことができなかった。

（BGM：切ない曲調に変わる）

○A子の自宅・リビング（1年後・夜）

（A子、テープレコーダーを胸に抱え、深呼吸して再生ボタンを押す）

SE：留守電の再生音、B子のメッセージと警笛、衝突音

（A子、真剣な表情で音声に耳を澄ます）

A子：（心の声）
（なぜ、警笛が鳴っているのにB子は気づかなかったんだろう…？）

（A子、ふと何かに気づいたように顔を上げる）

A子：（独り言）
「電話をかける前から警笛は鳴ってたはず…。
どうして…？」

○寺・本堂（翌日・昼）

（A子、僧侶にテープを手渡す）

A子：（涙をこらえて、優しく微笑む）
「これ…B子の供養のために預かってください。
」

僧侶：（静かに頷く）

（A子、深く頭を下げて寺を後にする）

○A子の自宅・リビング（夜）

（A子、窓の外を見つめて）

N：あの日の出来事は、いまだに解けない謎のまま。

でも、B子の声だけは、私の心にずっと残っている。

（BGM：フェードアウト）