○回想・中学校 教室(昼)
N:僕が中学1年だった、あの日――。
(教室。
ざわめき、窓から春の光。
生徒たちの声。
カメラ、教室の一番後ろの端に座る女の子・ミサキ(12・小柄でおとなしい)と、その隣の男の子・ユウタ(12・無口で目立たない)を映す)
(SE:静かな教室の空気。
鉛筆の音)
(ミサキ、小さく震えながら、机の下で手をぎゅっと握り締めている)
(ユウタ、ふと異変に気づき、そっとミサキの方を見る)
(SE:水がこぼれるような微かな音。
ミサキ、顔を真っ赤にして俯く)
ユウタ:(心の声)(胸に手を当てて)どうしよう…誰にも気づかれないうちに……
(ユウタ、静かに席を立つ)(周囲は気にしていない)
(SE:椅子のきしむ音)
先生(30代・真面目そうな女性):(振り返る)ユウタ?どこ行くの?授業中よ――
(ユウタ、先生を無視して、教室を出る)
○廊下
(ユウタ、早足で手洗い場へ向かう)
(SE:足音、遠ざかる)
○手洗い場
(ユウタ、バケツを手に取り、水を汲む)
(SE:バケツに水が注がれる音)
ユウタ:(心の声)(深呼吸して)これしか、思いつかなかった……
○教室(続き)
(ユウタ、無言で戻り、ミサキの横に立つ)
(SE:静寂)
(ミサキ、おびえたようにユウタを見る)
(ユウタ、そっとミサキに目配せし、バケツの水をミサキにかける)
(SE:水のはねる音)
(教室、生徒たちがどよめく)
生徒A(驚いて):え、なにこれ!?
生徒B(目を丸くして):ユウタ、なにしてんだよ!
先生:(慌てて)ちょっと、どういうこと――
○職員室前 廊下
(ミサキとユウタ、それぞれの両親、先生が呼び出されている)
ミサキの母(40代):(涙ぐんで)うちの子が、何か……
ユウタの父(40代):(頭を下げて)本当に申し訳ありませんでした――
先生:(困惑気味に)なぜ、こんなことをしたのか…ユウタ君、答えなさい
(ユウタ、黙ったまま俯いている)
ユウタ:(心の声)(目を伏せて)説明なんて、できないよ……
○自宅・ユウタの部屋(夜)
(ユウタ、机に向かって座っている。
静かな夜)
(SE:チャイムの音)
○自宅・玄関
(ユウタの母がドアを開けると、ミサキとミサキの母が立っている)
ミサキ:(声を震わせて)……あの、今日のこと……本当は、私……
(ミサキ、ユウタの方を見る)
ミサキ:(涙をこらえて)ありがとう。
私、ぜんぶお母さんに話したから……
(ユウタ、驚いてミサキを見る)
(間)
ユウタ:(小さな声で)……うん。
(そっと微笑む)
(BGM:静かなピアノ曲が流れ始める)
N:あの日から、彼女の涙が僕の心に残った――
○現在・ユウタとミサキの自宅 リビング(昼)
(ユウタ(25)、ミサキ(25)、二人で並んでコーヒーを飲んでいる)
ミサキ:(優しく微笑む)あの時のこと、覚えてる?
ユウタ:(照れながら)……忘れるわけ、ないだろ。
(ミサキ、ユウタの手にそっと手を重ねる)
N:あの教室の隅から始まった物語は、今も静かに続いている――。
(カメラ、二人の手元にゆっくりズームイン)
(フェードアウト)
笑える話:きみの涙に触れた日――教室の隅から始まった二人の物語
きみの涙に触れた日――教室の隅から始まった二人の物語
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