不思議な話:時空を超えた邂逅と再会の約束 〜タイムスリップ体験譚の起承転結〜

時空を超えた邂逅と再会の約束 〜タイムスリップ体験譚の起承転結〜

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■【起】〜日常の中の異変、時を超える導入〜
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今思い返しても背筋が凍る体験だが、どうしても誰かに伝えずにはいられない。
平成20年6月24日、いつも通り外回りの仕事でH市内を顧客名簿片手に移動していた。
梅雨の湿気と暑さに耐えかねて、某ビルの横の日陰でひと休み。
汗でぐしょぐしょのシャツを着替えようとバッグを覗き込んだ、まさにその瞬間だった。

頭上からトンビの鳴き声が響き、「ピーヒーヨロ」と聞こえた途端、世界が暗転した。
どれほど時が過ぎたか分からない。
目を覚ますと、そこは夕暮れ時、見知らぬ田んぼの畦道。
周囲には藁葺き屋根の家が点在し、まるで時代劇の世界に迷い込んだかのようだった。

混乱しながらも、携帯電話を確認しても圏外、時計は19時半。
なぜこんな田舎にいるのか理解できず、助けを求めて灯りのついた古民家に向かうのだった。

■【承】〜異世界での戸惑いと謎の深まり〜
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古民家の玄関先に立ち、電話を借りようとするが、住人の老夫婦は「でんわとはなんね?」と首をかしげるばかり。
灯りも電気ではなく、あんどんの火。
尋ねても時代や元号さえ分からず、現代とはかけ離れた世界であることが次々と明らかになる。

道を歩けば見かけるのは髷を結った武士や着物姿の人々、籠屋風の男たち。
不審者扱いされる自分に不安が募り、「もしかして本当にタイムスリップしたのか?」という恐怖と困惑が押し寄せる。
携帯は圏外のまま、舗装もない道を歩き続けるが、周囲は江戸時代のような光景ばかり。

空腹と疲労の中、露店のおばちゃんからキュウリをもらい、街道で「慶長7年」と記された旗を目にする。
「歴史の勉強をしておけばよかった」と後悔しつつ、今は生き抜くしかないと覚悟を決めるのだった。

■【転】〜時空を超えた出会いとクライマックス〜
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港を目指して歩く最中、「にーちゃん、ライター持ってない?」と声をかけてきた初老の男が現れる。
現代語を話すこの男は、自らも平成11年にこの時代にタイムスリップした者だった。
彼の名前はM木さん。
平成の世界に帰れず、この時代で生きることを選んでいた。

M木さんの家で久しぶりのまともな食事をとり、涙が溢れる。
彼の話によると、これまでにも未来から来た8人と出会い、みな数日で元の時代に戻っていったが、自分だけは帰れないという。
M木さんは「君も数日すればきっと帰れる」と励ましつつ、元の時代に戻れたら奥さんに伝言をしてほしいと託す。

翌日、畑仕事を手伝っていると、再び頭上にトンビの鳴き声が響いた。
「ピヒーヨロー」――その瞬間、意識が遠のいていく。
M木さんが手を振る姿を最後に、視界は真っ白になった。

■【結】〜現実への帰還と心に残る約束〜
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目を覚ますと、そこは病院のベッド。
泣きじゃくる妻と子どもたちに囲まれていた。
会社にも連絡が取れず、行方不明として捜索願が出されていたという。
発見されたのは、最初にトンビの声を聞いたビルの間。
服装や持ち物も、タイムスリップ時のままだった。

M木さんの伝言を思い出し、病院の屋上から彼の家に電話をかける。
奥さんは涙をこらえながら、これで5人目の伝言だと語る。
信じてくれる人は少ないが、誰かに伝えずにはいられなかった。

この奇妙な体験は、いつまでも心に残る。
最後まで読んでくれた人たちに、心からありがとう。
読了
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