笑える話:俺が消えた日――パン工場でねじられた記憶

俺が消えた日――パン工場でねじられた記憶

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途中からもう、俺が生地をねじっているのか、生地に俺がねじられているのか分からなくなっていった。
自分が消えていくような感覚。
気付けば、無心で手を動かし続けるだけの存在になっていた。

その感覚に陥ったのは、6時間もの間、ひたすら同じ作業を繰り返したからだ。
流れてくる細長い生地を、機械のようにねじり続ける。
生地が来る、ねじる、生地が来る、ねじる――絶え間ない単調なリズムが、俺から「自分」を少しずつ奪っていった。

そうなるまでは「時給1300円」という言葉に惹かれ、気軽な気持ちで地方のパン工場の短期バイトに応募したのだ。
最初は、これならなんとかなると思っていた。
だが、工場のラインに立った瞬間から、事態は動き始めた。

最初の一日目で、単純作業の辛さを痛感した。
二日目、三日目と、ベルトコンベアの上を流れる生地と向き合う日々。
周囲のバイト仲間も次々と辞めていった。
アンパンのてっぺんにゴマを振るだけの仕事をしていた奴は、わずか二日で音を上げた。

すべての始まりは、「楽して稼げそう」という浅はかな動機からだった。
だが、その選択が、俺の日常をこんなにも単調で過酷なものに変えるとは、想像もしなかった。

実は、パン工場の単純作業は「体力」より「精神」を問われる現場だった。
今なら分かる。
―パン工場だけは、みんなやめておけよ。
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