時給1300円、過酷なパン工場バイトの実態──地方工場で見た労働現場の「ねじり作業」

■流れ作業に潜む過酷さ──地方パン工場での6時間

「時給1300円」という求人広告に惹かれ、20代男性Aさん（仮名）は、地方にあるパン工場で短期アルバイトを始めた。
取材によると、勤務期間は2023年春、勤務時間は1日6時間。
主な業務は、ベルトコンベアで流れてくるパン生地をひたすら手でねじり、「ねじりパン」を成形する作業だったという。

■終わらない単純作業の連続

Aさんが担当したのは、細長い生地を「ねじる」作業。
次々と生地が流れてくるため、1分たりとも気を抜くことはできない。

「生地が来る、ねじる、生地が来る、ねじる……。
この繰り返しを6時間続ける。
途中から、自分が生地をねじっているのか、生地にねじられているのかわからなくなった」と、Aさんは取材で振り返る。

工場内では他にも、あんパンのてっぺんにゴマを振る作業など、単調な作業が続く。
Aさんは2週間耐えたが、別の短期バイトの男性は「ゴマ振り」作業に2日で辞めてしまったという。

■単純作業の過酷さと肉体・精神への影響

人材サービス会社「リクルートワークス研究所」の調査（2022年）によると、製造業の単純作業バイトの離職率は平均より高く、特に短期アルバイトでは「作業の単調さ」が理由となるケースが多い。
Aさんも、「自分が消えていくような感覚だった」と語る。

労働環境問題に詳しい労働経済学者・田中一郎氏は、「工場の流れ作業は、単調さゆえに集中力や根気を求められる。
生産性の向上が進む一方で、労働者への精神的負担も増大する傾向がみられる」と指摘する。

■現場の声と今後の課題

Aさんは、「時給の高さに惹かれて入ったが、想像以上に大変だった。
パン工場のバイトは、覚悟が必要」と話す。

一方で、工場側は人手不足が深刻化しており、「単純作業でも担い手がいない」という悩みを抱える。
今後、単調作業の負担軽減や労働環境の改善が求められる。

■専門家「作業負担の見える化と支援を」

田中氏は、「作業の負担感を見える化し、定期的な休憩やローテーションを導入することが必要だ」と提言。

少子高齢化で人材確保が難しくなる中、工場現場では「働きやすさ」の追求が今後の重要課題となる。

単純作業の現場で、労働者と雇用主双方にとって持続可能な働き方の模索が続く。