■【起】〜静かな夜勤と、不穏な予感〜
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僕は以前、家から自転車で20分ほどのコンビニで夜勤をしていた。
駅からも遠く、周囲は人通りもまばらな静かな場所。
深夜にはほとんど客も来ず、僕は気楽に品出しの作業に没頭することができた。
この穏やかな単調さが、僕は気に入っていた。
しかし、ある時から夜の静けさに紛れて、奇妙な違和感が忍び寄ってきた。
店の周りをうろつく、不審な黒い影。
誰なのかも、どんな年齢なのかも分からない。
けれど、確かに毎晩のように、その影が現れるようになった。
深夜の薄暗い店内で、僕はその存在を強く意識するようになっていた。
■【承】〜不審な影の正体を探る夜〜
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その影は、夜が深まると必ず店の周囲を徘徊し始めた。
万引きの下見かもしれないと、僕は警戒心を強めていた。
外の様子に気を配りつつ、品出しを続ける夜が続いた。
そんなある日、いつものように出勤すると、普段とは違う違和感が僕を襲った。
客がいないのは慣れていたが、何かが決定的に「違う」のだ。
外にいるはずのあの「黒い影」が、今日はなぜか店のバックヤードにいる気配がする。
戸惑いと恐怖を感じながら、僕は従業員専用の出入り口を静かに開け、暗い倉庫へと足を踏み入れた。
そこには、猫背で真っ黒、まるですすにまみれたような不気味な何かが、ダンボールをかき分けながら何かを探していた。
■【転】〜対峙する恐怖、現れる“顔のないもの”〜
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僕は息をころして「アイツ」の様子をうかがった。
その黒い何かは、ぶつぶつと「ない……ない……」とつぶやきながら、床を探し続けている。
次第に体が固まり、逃げ出したい衝動を必死に抑えた。
すると突然、黒く猫背のそれがぴたりと動きを止め、ゆっくりとこちらに向き直ろうとした。
―顔は……どこだ……
その瞬間、僕の視界に入ったのは、首から上のない、血にまみれた“何か”だった。
その得体の知れない存在が、僕に向かって忍び寄ってくる。
理性よりも本能が先に動き、僕はとっさに電気をつけて、振り返らずに店内へ逃げ出した。
■【結】〜終わらぬ追跡、続く悪夢〜
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その事件以来、恐怖に耐え切れず、僕はコンビニの夜勤を辞めた。
しかし、安息は訪れなかった。
今度は自宅の周囲を、あの黒い影がうろうろするようになったのだ。
夜になるたび、どこからともなく「ない……ない……」といううめき声が聞こえてくる。
顔のない「アイツ」の声は、いったいどこから響いているのだろうか。
その答えを知る勇気もなく、僕はいまも不安な夜を過ごしている。
仕事・学校の話:静寂の夜勤、黒い影――顔のない“何か”と終わらぬ恐怖
静寂の夜勤、黒い影――顔のない“何か”と終わらぬ恐怖
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