■【起】〜母の手を離した朝、色とりどりの電車たち〜
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小学校低学年の頃、私は母に手を引かれ、遠い親戚を訪ねるため駅にいました。
色とりどりの電車が行き交うホーム。
私はその光景に心を奪われ、つい母の手を離してしまいました。
人混みに流されるまま、母の姿が遠ざかっていくのを、なぜか冷静に眺めていました。
不思議と、怖さや寂しさの感情は全く湧いてきませんでした。
■【承】〜見知らぬ親子と、どこか懐かしい影〜
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私は黄色い安全線の上に立ち、反対側のプラットホームをぼんやりと眺めていました。
そこには仲睦まじい親子がいました。
小柄な女性と小さな女の子。
女性は大きめの水色のコートを羽織っています。
初めて見るはずなのに、なぜか懐かしい感じが胸に広がりました。
やがて白と青の電車が滑り込んできて、親子の姿を隠していきます。
私はその様子を、ただ静かに見守っていました。
■【転】〜煙のように消えた親子と、私に似た少女〜
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電車が親子の前を通り過ぎた瞬間、白と青のコントラストは煙のように消えてしまいました。
幼い私は自分の目を疑いました。
電車は透明になり、乗客が宙に浮いているように見えたのです。
ドアが開く音だけが響き、人々が動き出します。
そのとき、親子が電車に乗り込もうとした刹那、電車がぐんとこちらに近づいてきました。
黄色い安全線の上にいた私は、電車との距離が1メートルもありません。
驚愕したのは、電車が異様な動きを見せたこと、そして少女が私に酷似していたことです。
■【結】〜残る記憶と、制服の少女が微笑んだ意味〜
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やがて電車は何事もなかったかのように発車し、私は無事に母に保護されました。
母を見失った寂しさから白昼夢を見ていたのかもしれない、そう思うこともあります。
けれど、時折思い出して少し怖くなるのです。
あの少女の服は、私が通っていた幼稚園の制服でした。
さらに、私と同じ位置に目立つほくろがあり、微かに微笑んでいたことを──。
不思議な話:駅のホームで出会った、もうひとりの「わたし」──白昼夢の余韻
駅のホームで出会った、もうひとりの「わたし」──白昼夢の余韻
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