○オフィス・フロア(朝)
N:新卒で入社した春。
電話を取るのは新人の仕事だった。
【登場人物】
・サクラ(22・新入社員・緊張気味)
・タナカ(50・同部署のおじさん・口下手)
・サトウ(28・先輩社員・明るい)
・他、社員数名
SE:オフィスのざわめき、キーボードの音
(サクラ、外線電話の前に座っている。
緊張した面持ち)
SE:電話のベルが鳴る
サクラ:(深呼吸して)(受話器を取る)
「はい、○○株式会社でございます」
(間。
受話器からは無音)
サクラ:(戸惑いながら、もう一度)
「もしもし、○○株式会社でございます」
SE:カチッと電話が切れる音
サクラ:(驚いて、少し眉をひそめる)(受話器を戻す)
「……切れちゃった」
(サトウ、すぐそばで様子をうかがう)
サトウ:(ひそひそ声で)(ニヤリとして)
「どうしたの? 変な電話?」
サクラ:(苦笑して)
「うん、無言で……。
もしかしてイタズラ…?」
(タナカ、遠くのデスクでそわそわと落ち着かない様子)
(サクラ、不意にタナカの方を見やる)
N:どこかで聞いた声。
だけど思い出せない。
(サトウもタナカに気づき、顔をしかめる)
サトウ:(声をひそめて)
「…あれ、タナカさん、なんか変だよ?」
SE:再び電話のベルが鳴る
(サクラ、再び受話器を取る)
サクラ:「はい、○○株式会社でございます」
SE:一瞬の沈黙
タナカ:(小さな声で)
「あっ…」
SE:再び電話が切れる音
(サクラ、驚いた顔で受話器を見つめる)
(社員たち、顔を見合わせる)
サトウ:(声を抑えきれずに)(笑いをこらえて)
「…今の、タナカさんの声じゃない?」
(オフィス中がざわめく)
サクラ:(困惑しながら)
「えっ?まさか…」
(サトウ、タナカに声をかける)
サトウ:「タナカさん、今、電話かけました?」
(タナカ、顔を真っ赤にして目をそらす)
タナカ:(しどろもどろで)
「いや、その…間違えて外線押しちゃって…」
(全員、一拍置いて)
SE:ドリフのような音
(オフィス中、大爆笑)
サクラ:(苦笑しながら)
「間違えたとしても、無言で切らないでくださいよ…」
サトウ:(肩をすくめて)
「これから無言電話きたら、まずタナカさんチェックだね」
(タナカ、頭をかきながら照れ笑い)
N:それからというもの、無言電話が鳴るたび、
みんなの視線はまずタナカさんへと向けられるようになった。
(BGM:穏やかにフェードイン)
○オフィス・フロア(数日後)
SE:電話のベルが鳴る
(サクラ、タナカを見る。
タナカ、両手を上げて「俺じゃない」とジェスチャー)
(みんな、笑いながら仕事を続ける)
N:新卒の春。
オフィスに、ちょっとだけ笑いが増えた。
仕事・学校の話:「無言の正体―新卒オフィスの小さな事件」
「無言の正体―新卒オフィスの小さな事件」
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