○レストラン・チャペル(昼)
(祝福ムードの中、人前式の準備が進む。
花々が彩るバージンロード。
親戚たちが談笑している)
N:それは、春の光が優しく差し込む、とある結婚式の日だった。
(新郎・裕樹(30・穏やかな雰囲気)、新婦・美咲(28・明るい笑顔)、親戚のお兄ちゃん(28・語り手)、新婦の両親、スタッフ)
○控室(同時刻)
(美咲、鏡の前で深呼吸しながら、髪を整えている)
美咲:(鏡越しに自分を見つめて)(小さく微笑む)
「大丈夫、大丈夫……今日は幸せになる日だから」
(ノックの音)
SE:ノック音
スタッフ:
「間もなく式が始まります。
ご準備をお願いします」
美咲:
「はい、すぐに行きます」
○レストラン・入口(同時刻)
(突然、場違いな装いの老婆・澄江(60代・やつれた雰囲気)が現れる)
澄江:(大声で)
「娘の結婚式だ!私の娘を返して!」
(親戚たち、ざわつく)
SE:騒然としたざわめき
○バージンロード近く(同時刻)
(新婦の両親、顔面蒼白で駆け出す)
N:式直前、突然現れた一人の老婆に、会場は騒然となった。
新婦父:(焦りながら)
「どういうことだ…!?」
新婦母:(震える声で)
「まさか…あの人が来るなんて…」
(澄江、スタッフに制止されながらも叫び続ける)
澄江:
「美咲!お母さんよ!お母さんが来たのよ!」
(美咲の控室まで声が届く)
○控室(同時刻)
(美咲、声に気づき、一瞬表情が曇る)
美咲:(目を伏せて)(心の声)
(…来ないで。
今日は、私の新しい人生の日なのに…)
○レストラン・チャペル(数分後)
(騒動がひと段落し、式が少し遅れて始まる)
N:混乱の後、式は少し遅れて始まった。
(美咲、バージンロードを歩く。
にこやかに微笑むが、瞳の奥に翳り)
親戚のお兄ちゃん:(心の声)
(…どうして、美咲さんはあんなに落ち着いていられるんだろう)
○披露宴会場・控室(式の数日後)
(親戚のお兄ちゃん、美咲と二人きりで話している)
親戚のお兄ちゃん:
「あの時…何があったのか、聞いてもいい?」
美咲:(静かに、遠くを見る)
「…私、あの人の本当の娘なの。
養女ってこと、ずっと隠されてた。
」
(間)
美咲:(声を震わせて)
「実母は、昔はお嬢様だったけど…落ちぶれてしまって。
私の兄が裕福な家と結婚すれば、また元の生活に戻れるって…思い込んでたみたい」
○回想・古い家(美咲・幼少期)
(幼い美咲、物置で膝を抱えている。
口にはガムテープ)
澄江:(若い頃)(必死の形相)
「いい?誰にも、うちが貧しいなんて言っちゃダメだからね…!」
SE:ドアが閉まる音
○披露宴会場・控室(続き)
美咲:(苦笑しながら)
「婚約者に妹がいることがバレて、慌てて…友人に“あげる”って、私を養子に出したの。
“もううちの子じゃない”って。
」
親戚のお兄ちゃん:(絶句して)(目を伏せる)
美咲:
「私はあの人を…許せない。
連絡も、もうとってない。
」
○回想・澄江のアパート(現在)
(澄江、古びた部屋で一人座っている。
壁に写真が数枚。
孤独な表情)
N:あれほど執着した母は、息子にも娘にも見放され、孤独な日々を送っている。
○披露宴会場・控室(続き)
美咲:(涙をこらえて)
「…あの女は、いつも私を不幸にするんだ。
」
(間)
親戚のお兄ちゃん:(そっと美咲の手に触れる)
「でも…今は、幸せなんだよね?」
美咲:(静かに微笑む)
「うん。
今は、ちゃんと幸せ。
」
(BGM:静かに優しい曲が流れる)
N:彼女は、ようやく自分の人生を歩き始めたのだ。
(フェードアウト)
修羅場な話:幸せのドレスと閉ざされた扉 〜嘘に縛られた母娘の結婚式〜
幸せのドレスと閉ざされた扉 〜嘘に縛られた母娘の結婚式〜
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