仕事・学校の話:見えない住人―赤いクレヨンの痕跡

見えない住人―赤いクレヨンの痕跡

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○売り出し中の家・外観(昼)
(曇り空。
静かな住宅街に佇む一軒家。
外装は新しく塗り替えられている)

○同・玄関(続き)
(ドアが開き、二人の作業員が現れる)

【登場人物】
佐藤修二(35・内装業・真面目で慎重)
田中陽介(32・内装業・お調子者だが臆病)

佐藤:(家を見上げて)(静かに)
「じゃあ、内装は俺たちの担当だな」

田中:(苦笑いしながら)
「外装、きれいだなぁ。
中もそうだといいんだけど…」

(ふたり、互いに目配せし、工具バッグを持って中に入る)

○同・リビング(昼)
(家具はなく、どこか冷え切った空気。
壁にはヒビが走っている)

N:誰もいない家。
僕らは無言で作業の準備を始めた。

佐藤:(壁を見て)
「…古いな。
ヒビも結構ある」

(田中、何かに気づき、しゃがみこむ)

田中:(小声で)(クレヨンを拾い上げる)
「これ…クレヨン? 子供でもいたのかな」

佐藤:(肩をすくめて)
「前の住人かもな。
ま、先に進もう」

○同・階段下(昼)
(階段の上にもクレヨンが転がっている)

田中:(首をかしげて)(階段を見上げる)
「…なんで階段の上にも?」

佐藤:(気にしつつも、作業モードに入る)
「手分けして様子見てくるか」

(ふたり、別々の部屋へ)

○同・二階廊下(数分後)
(静寂。
突然、田中の叫び声が響く)

田中:(息を切らして、階段を駆け下りてくる)(顔面蒼白)
「佐藤さん、やばい、やばいよ!」

佐藤:(驚いて駆け寄る)
「どうした!? 何かあったのか?」

田中:(震える声で)
「二階の部屋…クレヨンが落ちてて、そばに…女の子が立ってた。
声かけたら…消えたんだよ…!」

(間。
二人、緊張で息を潜める)(SE:階段のきしむ音)

佐藤:(こめかみに汗を浮かべて)(小声で)
「…とにかく、外に出よう」

○同・廊下(続き)
(廊下を歩く。
佐藤、ふと壁に目を留める)

佐藤:(壁を指さして)
「…この壁、なんか変だな」

(壁には等間隔の溝。
不自然に浮いて見える)

田中:(壁をノックする)(耳を近づけて)
「…薄い。
中が空洞っぽい」

佐藤:(決意を固めて)
「ヒビの補修ついでだ。
剥がしてみるか」

(工具で壁を剥がすと、ベニヤ板の裏からドアノブのない扉が現れる)

田中:(驚き、声を潜めて)
「…扉? 取っ手が…ない?」

(ふたり、10cm奥まった扉を見つめる。
取っ手の跡には小さな板が打ち付けられている)

佐藤:(手で押すが開かない)(苦い表情)
「…ダメだ、開かない。
蹴るぞ」

田中:(無言で頷き、息を合わせる)
「せーの!」

SE:バンッ!(扉が開く音。
ムッとした空気が漏れ出す)

(BGM、不穏に変調)

佐藤:(顔をしかめて、中を覗き込む)

田中:(声を震わせて)
「…クレヨンだ……」

○階段下・小部屋(薄暗い)
(カメラ、壁にびっしりと書かれた赤いクレヨンの文字を映し出す)

(ふたり、息を呑んで立ち尽くす)

N:この家は、まだ“何か”を抱えていた。

(BGM:静かにフェードアウト)
読了
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