―クレヨンだ……
階段下の小部屋の壁一面に、赤いクレヨンでびっしりと何かが書かれていた。
その異様な光景に、相方の乾いた声が響く。
ムッとする空気が漏れ出し、私たちは言葉を失った。
ベニヤ板の裏に隠された、取っ手のない扉。
その奥に、誰かの叫びのような痕跡があった。
この扉を発見したのは、ほんの数分前のことだ。
廊下で壁の違和感に気づき、相方がノックした瞬間、そこだけ薄い音が返ってきた。
ヒビの入った壁を剥がすと、奥まった場所に謎の扉が現れる。
取っ手は塞がれ、開かない。
私たちは無言で頷き合い、「せーの!」で蹴破った――そして、この部屋が姿を現したのだ。
だが、その異常な空間にたどり着くまでにも、すでに不穏な出来事が続いていた。
二階を見に行った相方が、青ざめた顔で階段を駆け降りてきた。
「やばい、やばいよ!」と叫ぶ彼は、二階にもクレヨンが落ちており、そこで小さな女の子の姿を目撃したという。
声をかけようとした瞬間、彼女は消えてしまったらしい。
私も背筋が凍るような感覚を覚えた。
思えば、あの日現場に着いたときから妙な気配はあった。
誰もいないはずの家。
古びた内装、壁のヒビ、そしてなぜか廊下に落ちていたクレヨン。
きっと前の住人の子供の忘れ物だろうと、そのときは深く考えなかった。
だが、今ならあのクレヨンが何を意味していたか分かる。
壁の奥に隠された部屋と、消えた少女。
赤いクレヨンの文字は、誰の、何のメッセージだったのか。
すべての始まりは、あの日、何気なく床に落ちていた一本のクレヨンだったのだ。
仕事・学校の話:赤いクレヨンの部屋――壁の向こうの真実
赤いクレヨンの部屋――壁の向こうの真実
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