仕事・学校の話:廃屋にこだまする赤いクレヨンの記憶──誰もいない家で見たもの

廃屋にこだまする赤いクレヨンの記憶──誰もいない家で見たもの

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■【起】〜静まり返る現場、異質な気配〜
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売り出し中の家の修復作業へ向かうことになった。
外装はすでに他の業者が仕上げており、内装の修復が自分たちの担当だった。

現場に着くと、周囲は静まり返っていて、誰の姿も見えない。
期待とわずかな不安を胸に、家の中に足を踏み入れる。

内装は傷んでおり、壁にはいくつものヒビが走っていた。
床にふと目をやると、廊下に一本のクレヨンが落ちているのに気が付く。

「ここに住んでいた子供の忘れ物だろうか」──そんなことを考えながら、作業のため奥へと進んだ。

■【承】〜不可解な痕跡、忍び寄る違和感〜
───────

階段の上にも、同じようにクレヨンが転がっていた。
その数の多さに、胸の奥に妙な引っかかりが生まれる。

作業の段取りを確認しながら、相方と手分けして部屋の様子を調べていくことにした。
古びた壁や床をチェックしつつ、どこか落ち着かない気持ちで作業を進める。

しばらくして、二階を見に行っていた相方が息を切らせて階段を駆け下りてきた。

「やばい、やばいよ!」

彼は青ざめた顔で、二階にもクレヨンが落ちていて、小さな女の子が立っていたと訴える。
声をかけようとした瞬間、彼女は消えてしまったという。
相方の様子に、背筋がじわりと冷たくなった。

■【転】〜暴かれる壁の向こう、真紅の叫び〜
───────

不穏な空気を感じながら、とにかく外に出ようと廊下へ戻った。
そこで、自分は壁の一部に奇妙な違和感を覚える。
等間隔の溝があり、その部分だけどうにも不自然だった。

相方が壁をノックすると、返ってきたのは鈍い音。
「薄い……」とつぶやく相方。
内装工事で壁を塗り替える予定だったため、思いきってヒビのある部分を剥がしてみることにした。

すると、ベニヤ板の裏からドアノブのない扉が現れた。
取っ手があったはずの部分には、小さな板でふさがれた跡が残る。
扉は壁より10cmほど奥まった位置にあり、手では開かない。
無言でうなずき合い、呼吸を合わせて足で蹴破る。

「せーの!」

二度目の蹴りで扉がバンと開いた。
中からはムッとする空気が流れ出る。

「……クレヨンだ」

相方の乾いた声が響いた。

■【結】〜赤い文字に刻まれた静かな恐怖〜
───────

階段下の物置のような小部屋の壁一面に、赤いクレヨンでびっしりと何かが書き殴られていた。

そこに刻まれた意味不明な文字列と、家中に転がっていたクレヨン。
その光景が頭から離れないまま、二人で無言のまま家を後にした。

静けさの中に、今もあの赤いクレヨンの記憶がこだましている気がした。
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