○結婚式場・チャペル(昼)
N:(穏やかな祝福ムードに包まれたチャペル。
光が差し込む中、ゲストが見守る)
SE:オルガンの演奏
○参列者席
(主人公・高橋誠司(50代・穏やかな雰囲気)が一人、静かに新婦を見つめている)
N:
私、高橋誠司。
今日、親友の結婚式に出席している。
…いや、正確には、親友の「娘」の結婚式だ。
(新婦・佐藤美咲(20代・芯の強い瞳)が純白のドレス姿でバージンロードを歩く。
隣には「父」としての親友・佐藤和也(50代・誠実な人柄)が寄り添う)
○回想・高校の教室(30年前)
SE:教室のざわめき
(若き日の佐藤和也(21歳)、高橋誠司(同い年)。
窓際で話し込んでいる)
和也:(目を伏せて)
「…両親が事故で亡くなった。
妹だけは、俺が育てる。
」
誠司:(驚いて)
「無理だろ…お前、まだ21だぞ?妹のためとはいえ…」
和也:(力強く、どこか寂しげに)
「誰にも渡したくないんだ。
両親の代わりはできないけど…俺が、父親になる。
」
(間)
誠司:(苦しそうに)
「…頑張れよ。
」
○現在・結婚式場(続き)
N:
あれから30年。
彼は妹を「娘」として育てる道を選び、私はずっと見守ってきた。
(和也、新婦・美咲の手をそっと握る。
二人の間に温かな空気)
○回想・和也の自宅・リビング(夜)
(和也が仕事帰り、エプロン姿で家事をこなす。
幼い美咲が笑顔でまとわりつく)
SE:鍋の蓋が開く音
N:
家事に、仕事に、育児。
彼の背中を見て、何度も「何か手伝えることはないか?」と聞いた。
でも、俺にできたのは、ただ酒を酌み交わし、話を聞くくらいだった。
○バー・カウンター(数年前・夜)
(和也と誠司、グラスを傾ける)
誠司:(静かに)
「大丈夫か?」
和也:(微笑んで)
「なんとかなるさ。
」
○現在・結婚式場(続き)
SE:マイクの音
司会者:
「それでは新婦から、お父様へのお手紙です。
」
(会場が静まり返る)
美咲:(手紙を手に、声を震わせて)
「お父さん、今まで本当にありがとう…。
」
(涙をこらえながら読み上げる)
(間)
美咲:(ふと顔を上げ、会場を見渡して)
「…お兄ちゃん。
」
(場内、ざわめく)
SE:ざわめき
N:
彼女はすべて知っていたのだ。
美咲:(声を詰まらせて)
「高校生の時、書斎で日記を見てしまいました。
私が本当は“妹”だったこと…でも、お兄ちゃんのおかげで、私は幸せでした。
ごめんね。
私のせいで、お兄ちゃんの人生を…」
(会場、静寂)
和也:(涙を浮かべ、ゆっくり立ち上がる)
(美咲に近づき、目線を合わせて)
和也:(声を震わせて)
「違うよ。
お前が…こんなに大きく育ってくれた。
それだけで、俺は十分幸せだ。
」
(美咲、涙があふれ、和也に抱きつく)
SE:拍手
(会場全体、温かな拍手に包まれる)
○披露宴会場・夜
(式も終わり、誠司と和也が居酒屋で向かい合って座る)
SE:グラスがぶつかる音
誠司:(しみじみと)
「…よくやったな。
」
和也:(涙ぐみながら、笑って)
「いえいえ…俺は何も…。
」
(しばし、グラスを傾ける二人)
N:
今、和也が楽しみにしているのは、もうすぐ生まれてくる孫のことだという。
(BGM:静かに、温かい曲が流れる)
(カメラ、二人の背中をゆっくり引きで映し、画面フェードアウト)
感動する話:祝福の涙~「兄」と「父」の間で揺れる絆
祝福の涙~「兄」と「父」の間で揺れる絆
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