「お父さん、今まで本当にありがとう。
そして…お兄ちゃん。
」
新婦のその一言で、静まり返った結婚式場がざわめきに包まれた。
花嫁が涙ながらに手紙を読み、感謝の言葉を述べた後、父親を「お兄ちゃん」と呼んだ瞬間――その場にいた誰もが予想しなかった真実が明かされたのだ。
実は彼女は、高校時代に書斎で見つけた日記で、自分が「娘」ではなく「妹」として育てられていたことを知っていた。
その秘密を胸にしまいながらも、彼女は「兄」に深い感謝と、人生を狂わせてしまったことへの謝罪の言葉を贈った。
しかし、友人は「それは違う。
お前がこんなに大きく育ってくれた。
それだけで十分だ」と優しく答えた。
その場にいた私は、涙を抑えきれなかった。
では、なぜこんなことが起きたのか?
話は数十分前、会場の和やかな雰囲気に遡る。
私は、新婦である友人の「娘」の結婚式に出席していた。
私たちは高校時代からの親友で、彼とは30年以上の付き合いがある。
私は彼の娘も、小さな頃からよく知っていた。
何度も「父娘」として二人が寄り添う姿を見てきたし、今日の晴れ舞台も当然のように祝福していた。
しかし、実際には「父娘」ではなかった。
友人が21歳のとき、両親が事故で亡くなり、幼い妹と二人きりになった。
祖父も既に病気で他界し、親戚に妹を預けることも考えたが、どうしても嫌だった。
そこで彼は、妹を「娘」として育てる決意をしたのだ。
21歳の青年が、妹のために自分の人生を捧げる決意――私には到底真似できない判断だった。
当時、私は正直に反対した。
片親として妹を育てるなんて無理じゃないか?母親のことはどう説明するんだ?戸籍がどうなるんだ?祖父のもとで育ててもらった方がいいのでは?と。
しかし、友人は「自分の幸せは二の次でいい、妹の笑顔があったから今までやってこれた」と言い切った。
私はそれを聞いて、もう「頑張れ」としか言えなかった。
それから彼は、家事も仕事も育児も一手に引き受け、必死に生きてきた。
私は時々「何か手伝えることはないか?」と声をかけるのが精一杯で、せいぜい酒に付き合い、話を聞くくらいしかできなかった。
そして今日、その「娘」が結婚する日を迎えた。
私は、彼女が自分の出自を知らないのだろうと思っていた。
しかし、彼女はすべて知っていた。
そして、それをあえてこの場で告白し、兄への感謝と謝罪を伝えたのだ。
結婚式は、涙と拍手に包まれて幕を閉じた。
その夜、私は友人と居酒屋で酒を酌み交わした。
彼は涙を流しながらも、「いえいえ」と穏やかに笑った。
そして今、彼が一番楽しみにしているのは、孫の誕生だという。
思えば、彼の決断があったからこそ、この奇跡のような家族の物語が生まれたのだ。
感動する話:「お父さん」から「お兄ちゃん」へ――涙の結婚式、その真実の告白
「お父さん」から「お兄ちゃん」へ――涙の結婚式、その真実の告白
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