すれ違う情熱、交差する夜 〜それでもあなたが好きだった〜

○職場・オフィス（夕方）

N：職場で出会った二人。
始まりは、同じ情熱だった。

（活気あるオフィス。
書類を片手に立つ女性）

夕紀（28・真面目で少し不器用）：（机の上で資料をまとめている）

悠人（30・穏やかだが仕事熱心）：（隣の席でパソコンを叩く）

夕紀：（微笑んで）「悠人さんも、やっぱり残業ですか？」

悠人：（少し照れて）「うん、まだ終わらなくて。
でも…嫌いじゃないよ、この感じ。
」

（目が合い、一瞬の静寂）

（BGM、穏やかなピアノ）

N：私たちは、仕事への想いで自然と引かれ合った。

○マンション・リビング（夜）

（引っ越したばかりの部屋。
カーテンがまだ付いていない）

夕紀：（段ボールを開けながら）「なんか…新しい生活、実感わかないね。
」

悠人：（コーヒーを差し出しながら）「少しずつ、慣れていこう。
」

（そっと手を重ねる）

N：付き合い始めて数カ月。
自然と、結婚のことも考え始めていた。

○同・リビング（深夜）

（部屋は暗く、時計の針は深夜を指す）

（夕紀、一人ソファに座ってスマホを見る）

SE：携帯の着信音（数回鳴るが、すぐ止む）

夕紀：（ため息をついてスマホを伏せる）

N：でも、私たちの優先順位は、いつも「仕事」が一番だった。

○同・リビング（数日後・夜）

（夕紀、窓の外を見つめて）

（悠人、遅れて帰宅）

SE：ドアが静かに閉まる音

夕紀：（振り返る）

悠人：「ごめん、今日も遅くなって…」

夕紀：（声を震わせて）「ねぇ…いつも仕事ばかりだね。
私、寂しいよ。
」

（間）

悠人：（目を伏せて）「……。
」

夕紀：（涙をこらえて）（しばらく沈黙のあと）「…仕事と私、どっちが大事なの？」

（BGM：切なく静かな曲調に変わる）

悠人：（長い沈黙）（静かに）「夕紀のことは、本当に大切だ。
でも…今は仕事を手放せない。
」

（夕紀、俯いて黙る）

（間）

N：その夜、私たちは、同じ部屋にいながら、遠い場所にいた。

○同・玄関（翌朝）

（スーツケースを持つ夕紀。
悠人は立ちすくんでいる）

夕紀：（声を詰まらせて）「…ありがとう、今まで。
」

悠人：（何も言えず、ただ見送る）

SE：ドアが閉まる音

○引っ越し先・何もない部屋（数日後）

（夕紀、一人で荷物を片付けている）

（カーテンも家具もない、がらんとした部屋）

SE：小さく鼻をすする音

夕紀：（床に座り、膝を抱え、涙がこぼれる）

N：彼の大切なものを、もっと理解してあげればよかった。

あの日の自分の未熟さを、ただ静かに悔やむしかなかった。

（カメラ、夕紀の背中にゆっくりズームイン）

（BGM：静かにフェードアウト）