仕事と私たちの距離——すれ違いの先に見えたもの

職場で出会った彼と、最初に心が通じ合ったのは、お互いの仕事への情熱がきっかけでした。

付き合い始めてから数カ月で同棲を始め、自然と結婚を意識するようになった私たち。

けれど、どちらも仕事を生活の一番大切なものとして考えていたのです。

そんな日々の中、家に帰っても彼がいないことが以前より多くなりました。

私自身も「仕事が一番」と思っていたはずなのですが、それでも寂しさが少しずつ募っていったようです。

そして、とうとう我慢できずに「仕事と私、どっちが大切なの？」と彼に問いかけてしまいました。

彼はしばらく黙った後、「夕紀のことは本当に大切。
でも今は仕事を手放せない」と答えてくれました。

そのやりとりがきっかけとなり、私たちは別れる決断をしたのでした。

今振り返ると、彼の大切にしていた仕事について、もっと理解しようとできなかった自分の未熟さもあったのだと思います。

数日後、引っ越しの準備で部屋を片づけていた時のこと。

何もない部屋で一人きりになった私は、ふと涙がこぼれ落ちました。