気がつくと、私は学校の廊下にある大きな鏡の前に立っていた。
そこに映るのは、驚きと混乱に満ちた自分の顔。
まるでテレビのチャンネルが突然変わったような感覚だった。
数分前まで校庭でサッカーをしていたはずなのに、記憶がごっそりと抜け落ちている。
私の中から冬のある日から初夏までの時間が消えていたのだ。
なぜこんなことが起きたのか。
鏡に映る少し成長した自分を見て、不安で泣きそうになりながらも、名札の「4年1組」という文字を確認した。
教室が2階の左端にあること、今が5月であること――消えたはずの記憶の断片が、なぜか「思い出した」ように浮かんでくる。
しかし小さな日常の記憶――どんなテレビを見て、誰と遊んだのか――だけが、完全に抜け落ちていた。
チャイムが鳴り、とりあえず教室へ向かう。
顔ぶれは大きく変わらない。
新しい教科書やノートを前に、そこに書かれているのは自分の字なのに、書いた記憶はない。
授業の内容は理解できたが、なぜかしっくりこない。
私は違和感を抱えたまま、しばらくの日々を過ごすことになる。
すべての始まりは、小学3年生の冬だった。
あの日、校庭でサッカーをしていた記憶が最後。
気づけば、数ヶ月後の自分へとワープしていたかのようだった。
普段からボーッとしていた私は、この異常な空白期間について家族にも友人にも黙っていた。
「忘れちゃった」と笑ってごまかしながら、内心はずっと不安だった。
今になって思う。
もしかしたら、当時の自分の中に別の人格がいたのではないか。
記憶を共有する部分と、隠しておきたい秘密の部分があったのかもしれない。
もしも大人になった今、また同じことが2〜3年も続いたら――考えるだけで、ぞっとする。
不思議な話:「記憶が消えた、その瞬間から始まる僕の謎」
「記憶が消えた、その瞬間から始まる僕の謎」
🔄 オチから に変換して表示中
読了
スワイプして関連記事へ
0%
記事要約(300文字)
ダミー1にテキストを変換しています...
0%
変換中
コメント