小学生の頃、不思議な記憶の空白を体験した話

私は小学3年の冬から4年の5月までの間、どうしても思い出せない記憶があります。

校庭でサッカーをしていたのが最後の記憶で、次に気がつくと学校の廊下にある大きな鏡の前に立っていました。
まるでテレビのチャンネルが急に切り替わったような感覚で、とても混乱し、驚いてしまったのです。
その時の驚いた自分の顔が鏡に映っていたことを、今でも鮮明に覚えています。

鏡に映ったぼんやりした自分の顔を見ながら、服や周囲の様子を見回しました。
少し成長した自分の顔や身体に触れてみると、なんだか不安で泣きそうになってしまいました。

名札に「4年1組」と書いてあるのを見て、ようやく少しずつ情報が頭に浮かんできました。
4年生になったこと、今が5月であること、教室が2階の左端にあること、などです。
不思議なことに、記憶が飛んでいるはずの期間のことを「思い出した」ような感覚もありました。

その時、チャイムが鳴ったので、とりあえず教室に向かうことにしました。
学年には2クラスしかなく、クラスメートの顔ぶれも大きくは変わっていなかったようです。
授業が始まり、初めて見る教科書やノートを開いてみました。
汚れや折り目のある教科書は見覚えがありませんでしたが、授業の内容自体は理解できました。
ノートに書かれていた字は確かに自分のものなのに、その時の記憶は全くありませんでした。

しばらくの間は、そんな違和感を抱えたまま過ごしていました。
その間に何があったのかを思い出そうとしても、どうしても個人的な記憶だけが抜け落ちているようでした。
たとえば、テレビで何を見たのか、誰と遊んだのか、といったことです。

この不思議な出来事については、家族や友人にも話さずにいました。
普段からぼんやりしていた私は、記憶のない期間の話題になると「忘れちゃった」と笑ってごまかしていましたが、実はとても不安だったのです。

その後、もしかしたら自分の中に別の人格がいたのではないか、と考えるようにもなりました。
記憶を共有できる部分と、秘密にしたい部分があったのかもしれません。

今、もし大人になってから2〜3年も同じことが起きたらと思うと、正直ぞっとしてしまいます。