■【起】〜校庭のサッカーと、突然の空白〜
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私の記憶の中には、小学3年の冬から4年の5月まで、どうしても思い出せない期間があります。
最後に覚えているのは、校庭でサッカーをしていたときのこと。
次に気がついたとき、私は学校の廊下にある大きな鏡の前に立っていました。
まるでテレビのチャンネルがいきなり切り替わったような感覚で、混乱と驚きが私を包みました。
鏡には、驚いた自分の顔がはっきりと映っていました。
■【承】〜鏡に映る自分と、よみがえる断片〜
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ぼんやりとした表情で鏡を見つめ、服や周囲を確認した私は、少し成長した自分の顔や体を触りながら、不安に押しつぶされそうになりました。
名札に「4年1組」と書かれているのを見て、少しずつ状況を理解し始めます。
4年生になったこと、今が5月であること、教室が2階の左端にあることなど、記憶が飛んでいるはずの期間の情報が、なぜか頭に浮かんできます。
チャイムが鳴り、とりあえず教室へ向かいました。
学年は2クラスしかなく、友達の顔ぶれも大きく変わっていません。
授業が始まり、見覚えのない教科書やノートを開きました。
教科書には使い込まれた跡があり、ノートには自分の字が並んでいますが、それを書いた記憶はありません。
それでも、授業の内容は理解できました。
■【転】〜消えた日常と、隠された不安〜
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その後もしばらく、私は違和感を抱えたまま日々を過ごしました。
失われた期間を思い出そうとしましたが、テレビで何を見たか、誰と遊んだかといった個人的な記憶だけが抜け落ちているのです。
このことを家族や友人には話せませんでした。
普段からぼんやりしていた私は、記憶の空白について話題になっても「忘れちゃった」と笑ってごまかしていましたが、本当は不安でたまりませんでした。
やがて、もしかしたら別の人格がいたのではと考えるようになりました。
記憶を共有できる部分と、どうしても秘密にしたい部分があったのかもしれない、と。
■【結】〜大人になった今も残る余韻〜
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もしも大人になってから、2年や3年もの間、同じことが起きたら――そう考えると今でも背筋が凍ります。
あの記憶の空白と鏡に映った自分の驚きは、今も私の中に不思議な余韻を残しています。
不思議な話:記憶の空白と鏡の中の自分――不思議な時間断絶の体験
記憶の空白と鏡の中の自分――不思議な時間断絶の体験
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