○結婚式場・披露宴会場(夜)
(会場は華やかな装飾で彩られ、笑顔と祝福の拍手に包まれている。
新郎新婦が中央テーブルに座り、親族や友人たちが見守る)
(BGM:穏やかなピアノ曲が流れている)
司会者:(明るく)
「それでは、ここで新婦のお父様より、ご挨拶をいただきます。
」
(BGM:静かにフェードアウト)
(新婦の父・佐藤正彦(50代・寡黙だが優しさが滲む)が静かに立ち上がる。
手には小さな古い箱を抱えている)
(会場が自然と静まり返る)
佐藤正彦:(ゆっくりと、噛みしめるように)
「明子。
お前が生まれた時、お母さんは、病気で…亡くなった。
」
(新婦・明子(25歳・芯の強い優しい女性)は、じっと父を見つめる)
佐藤正彦:(声を震わせて)
「お前は…写真でしか母の顔を知らず、母の声も聞いたことがない。
」
(会場、しんと静まる)
佐藤正彦:(目を伏せて、思い出を辿るように)
「それでも、文句をひとつも言わず、明るく育ってくれたな。
家事もよく手伝ってくれて…本当に、手のかからない子だった。
」
(明子、目に涙をためて父の言葉を聞く)
佐藤正彦:(明子をしっかり見つめ)
「今日、こんなに素敵な人と結婚するお前を見て…お母さんもきっと、喜んでいると思う。
」
(間)
佐藤正彦:(少しだけ微笑み、そっと箱を開ける)
「私には、お前に渡したいものがある。
」
(会場の視線が一斉に箱に注がれる)
(佐藤、ゆっくりと中から一本のビデオテープを取り出す)
(スタッフがテープをプレーヤーにセットする)
SE:テープが再生される機械音
(会場の照明が少し落ちる)
(スクリーンに映し出される古い映像。
病院のベッド、柔らかな光。
若い女性(明子の母・久美子)が生まれたての赤ちゃんを優しく抱いている)
(BGM:切なく温かなストリングス)
N:25年前。
母と娘、たった一度きりの時間――
(画面の中の久美子は、笑顔で赤ちゃんをあやしている。
声は優しく、明子を包み込むよう)
久美子(映像の中で、穏やかに):
「明子…これから、たくさん幸せになるのよ。
」
(明子、初めて母の動く姿と声を目の当たりにし、手で口元を押さえる)
(涙が頬を伝う)
(会場のあちこちからすすり泣きが聞こえる)
友人A(心を打たれて、そっとハンカチを目に当てる)
(スクリーンを見つめる明子の目に、涙があふれ続ける)
(正彦は席に戻り、じっと映像を見つめている。
表情は変わらないが、手が小さく震えている)
(カメラ、明子と父の表情を交互に映す)
(BGM:静かに高まりを見せる)
SE:会場全体に広がる静寂
N:この瞬間、明子は気づいた。
父がずっと胸にしまっていた母の愛情――そして、父自身の深い愛情を。
(映像が終わる)
(明子、涙を拭いながらも微笑み、父の方を見つめる)
(正彦、そっと明子にうなずく)
(会場全体が静かな拍手に包まれる)
(間)
(BGM:優しいピアノの余韻)
(画面フェードアウト)
感動する話:花嫁が初めて見た母の微笑み 〜父のスピーチがつなぐ25年の想い〜
花嫁が初めて見た母の微笑み 〜父のスピーチがつなぐ25年の想い〜
🎭 ドラマ に変換して表示中
読了
スワイプして関連記事へ
0%
記事要約(300文字)
ダミー1にテキストを変換しています...
0%
変換中
コメント