不思議な話:すれ違うふたり、重なる空 ──約束のベンチで

すれ違うふたり、重なる空 ──約束のベンチで

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○公園・ベンチ前(夕方)

N:いつも彼女を待たせてしまう自分が、今日は10分も早く着いた。

(ベンチに座る主人公・ユウタ(26・誠実そうな青年)、落ち着かない様子でスマホを何度も見る)

SE:遠くで子供の笑い声

ユウタ:(心の声)(深呼吸して)今日は絶対、待たせたりしない。

(空を仰ぐ。
夕暮れの雲が流れる)

N:だけど、約束の時間になっても、彼女は現れなかった──

(時計を見るユウタ。
時間を気にする手が微かに震える)

SE:時計の針の音が大きく響く

(10分が経過)

ユウタ:(不安げに)……もう10分か。

(スマホを手に取る。
電話をかけようと指が動く)

SE:スマホの着信音

ユウタ:(驚いて)あっ……

(画面に「カナ」からのメッセージ表示)

○ユウタのスマホ画面(アップ)

カナ(24・明るく芯の強い女性):(メッセージ)「今、どこにいるの?」

ユウタ:(すぐに返信しながら、戸惑い)「○○のベンチにいるよ」

○カナ・同公園(同時刻)

(カナもベンチに座っている。
だが、ユウタはいない。
苛立ちと不安が入り混じった表情)

カナ:(スマホに打ちながら、声はわずかに怒気)「何言ってるの?私もここにいるのに」

○ベンチ前(ユウタ側)

ユウタ:(困惑して、辺りを見回す)(声を押し殺して)……間違えるはずがないのに。

(スマホを握りしめる)

ユウタ:(返信しながら)「俺もちゃんと待ってたよ。
ベンチひとつしかないし……」

○カナ側

カナ:(苛立ちを抑え、深呼吸)(画面をじっと見つめて)

カナ:「……今、自転車に乗った人が通ったけど、服装とか見えた?」

○ユウタ側

ユウタ:(思い出しながら)「うん、ジャケット着た男の人だよね?」

○カナ側

カナ:(驚いて)「そう、それ!」

(間)

○ベンチ前(ユウタ・カナ交互カット)

N:同じ景色、同じ時間。
なのに、なぜか会えない。

ユウタ:(動揺しながら)「写メール、送ってみようか……?」

カナ:「……うん」

(二人、空・雲・ベンチ・時計を写真に撮り、送り合う)

SE:写真送信音

(互いのスマホ画面に、ほぼ同じアングルの写真が映し出される)

(沈黙)

(ユウタ、呆然とスマホを見つめる)

ユウタ:(声を震わせて)……なんで、会えないんだ?

(カナ、唇を噛みしめて目を伏せる)

(BGM:不安な旋律が静かに流れる)

N:場所も、時間も、間違っていないはずだった。

○公園出口(夕暮れ)

(ユウタ、足早に歩き去る。
カナも別方向に歩き出す)

N:気味悪さと、戸惑いを抱えたまま、それぞれ家路についた──

○ユウタの自宅・リビング(夜)

(ユウタ、ソファに沈み込む。
スマホが鳴る)

SE:着信音

ユウタ:(疲れた声で)「……カナ?」

○カナの自宅・ベッドルーム(同時刻)

(カナも受話器を耳に当てる)

カナ:(涙をこらえて)「……ごめん、なんか、怖くて……」

(ふたり、電話越しに長く会話を続ける)

(画面、ゆっくり暗転)

○翌朝・公園前(朝)

(ユウタとカナ、それぞれ、公園に向かって歩いてくる)

(遠くで互いの姿を見つける)

(カナ、駆け寄る。
ユウタも歩み寄る)

(見つめ合う二人、涙が溢れ、思わず抱きしめ合う)

SE:鳥のさえずり

(BGM:感動的な旋律に変わる)

ユウタ:(声を詰まらせて)「……本当に、会えた……」

カナ:(涙をふきながら)「ユウタ……」

N:異世界に迷い込んだのは、どちらだったのか。

(カメラ、二人の背中越しに朝焼けの空を映す)

(フェードアウト)
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