感動する話:小さな背中と、言えなかった「さみしい」の日々

小さな背中と、言えなかった「さみしい」の日々

🎭 ドラマ に変換して表示中
○実家・玄関(夕方)

SE:玄関のチャイムが鳴る

(ドアが開く。
小さな甥っ子がリュックを背負い、母の入院で預けられてやって来る)

甥っ子(5・小柄で素直):「ままが びょうきだから、おとまりさせてね」

(微笑みながら見守る“おねえちゃん”=私(28・優しく明るい)と両親)

○実家・リビング(夜)

(甥っ子、じいじ・ばあばと一緒に遊んでいる。
笑顔がはじける)

SE:子供の笑い声

N:(静かに)甥っ子は、家族の中ですぐに打ち解けていった。

昼間は、じいじやばあば、そして私と遊び、夜は――

○実家・寝室(夜)

(甥っ子、布団の前で楽しそうに)

甥っ子:(指を折りながら)「きょうは、じいじと ねる」「きょうは、ばあばと ねる」

(じいじ・ばあば、暖かく見守る)

N:誰と寝るかを自分で選ぶのが、毎晩の楽しみだった。

○実家・リビング(数日後・昼)

(甥っ子、無邪気におもちゃで遊ぶ)

SE:おもちゃの音

(ふいに手を止めて、ふと窓の外を見つめる)

甥っ子(ぽつりと):「ままは、びょうき なおったかなぁ〜」

(おねえちゃん、そっと隣に座る)

おねえちゃん:「寂しい?」

甥っ子(すぐに顔を上げる):「ううん、だいじょうぶ!」

(おねえちゃん、微笑むが、少しだけ目を伏せて)

N:(苦笑しながら)子どもなりに、気をつかっているんだよね…
寂しさを見せない甥っ子に、私たちは胸が痛んだ。

○実家・廊下(夜)

SE:時計の針の音

N:妹の入院から十日ほどが経ったある夜――

○実家・おねえちゃんの部屋(夜)

(おねえちゃんの布団に、甥っ子がもぐりこむ)

甥っ子(小さな声で):「おねえちゃん、ぼく、あした おうちに かえるね。
しばらく かえってないからね」

(おねえちゃん、一瞬戸惑い、言葉に詰まる)

おねえちゃん(優しく、頭を撫でて):「そうだね、そのうち おうちに帰ろうね」

(甥っ子、うなずいて目を閉じる)

○翌日・実家・庭(昼)

(甥っ子、元気に走り回り、笑顔を見せる)

N:昼間の甥っ子は、いつも通りに明るかった。

家のことも、ママのことも、何も言わずに――

○実家・おねえちゃんの部屋(夜)

(再びおねえちゃんの布団にもぐりこむ甥っ子)

甥っ子(昨日と同じように):「おねえちゃん、ぼく、あした かえるね」

(おねえちゃん、布団の中で静かに甥っ子を見つめる)

おねえちゃん:(心の声)――この子は、本当はずっと、がまんしてるんだ。

(目を伏せて)ずっと、ママに会いたいんだ。

(そっと甥っ子の背中を撫でる)

おねえちゃん:「そうだね。
明日になったら、ママに会いに行こうか」

(甥っ子、少しだけ笑って)

甥っ子(寂しさを隠しきれず):「おねえちゃん……あしたは、なかなか こないねえ」

(おねえちゃん、言葉を失い、静かに甥っ子を抱きしめる)

(カメラ、ゆっくりズームイン)

○同・廊下(同時)

(そっと戸の隙間から覗くばあば・涙をこらえきれず、そっと拭う)

SE:涙の落ちる音

○実家・リビング(数週間後・朝)

N:そんな日々が続き、甥っ子は約一ヶ月、私たちと過ごした。

○実家・玄関(晴れた昼)

SE:玄関のチャイム音

(ママとパパが迎えにやって来る。
ドアが開く瞬間、甥っ子の目が輝く)

甥っ子(駆け寄って):「まま!」

(何度も何度も「まま!」と叫び、ママに抱きつく)

(ママ、涙ぐみながら甥っ子を抱きしめる)

(家族全員、言葉にできず、ただその光景を見守る)

(おねえちゃん、目頭を押さえてそっと微笑む)

N:小さな体に、大きな気持ちを詰め込んだあの日々――
あの子が見せてくれた笑顔は、今も私の胸の奥に、あたたかく残っています。

(BGM:静かに優しい曲が流れる)

(フェードアウト)
読了
スワイプして関連記事へ
0%
ホーム
更新順
ランダム
変換
音読
リスト
保存
続きを読む

コメント

まだコメントがありません。最初のコメントを投稿してみませんか?

記事要約(300文字)

ダミー1にテキストを変換しています...

0%
変換中