感動する話:小さな背中が抱えた想い――甥っ子と過ごした一ヶ月の記憶

小さな背中が抱えた想い――甥っ子と過ごした一ヶ月の記憶

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■【起】〜突然の「おとまり」 小さな旅のはじまり〜
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妹が体調を崩して入院することになり、甥っ子は我が家でしばらく過ごすことになりました。

「ままが びょうきだから、おとまりさせてね」

小さな体にリュックを背負い、少し誇らしげな顔で玄関に現れた甥っ子。
その姿に、私たち家族は自然と笑顔になりました。

もともと家にはよく遊びに来ていたこともあり、甥っ子はじいじ、ばあば、そして『おねえちゃん』である私にもすぐに馴染みました。

新しい日常が、静かに始まりました。

■【承】〜無邪気な日々と見えない我慢〜
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昼間は家族で遊び、時には外食も楽しみ、甥っ子は毎日を明るく過ごしていました。

夜になると「きょうは、じいじと ねる」「きょうは、ばあばと ねる」と、誰と寝るかを自分で選ぶのが楽しみのようでした。
布団に入ると、子供らしい無邪気な笑顔を見せてくれます。

そんなある日、ふとした瞬間に「ままは、びょうき なおったかなぁ〜」と呟いた甥っ子。
寂しい?と聞いても、「ううん、だいじょうぶ!」と元気に答えます。

「子どもなりに、気をつかっているんだよね…」

そう話しながらも、甥っ子が寂しさを見せないことに、私たちは驚きと少しの胸の痛みを感じていました。

■【転】〜言葉にできない想いと涙の夜〜
───────

妹の入院から十日ほど経った夜、甥っ子は「きょうは、おねえちゃんと ねる〜」と私の布団に入ってきました。

「おねえちゃん、ぼく、あした おうちに かえるね。
しばらく かえってないからね」

その言葉に私は戸惑いました。
妹はまだ退院できず、帰れる目処も立っていません。
それでも私は「そうだね、そのうちおうちに帰ろうね」と優しく返しました。

次の日も、甥っ子は変わらず元気に遊びましたが、夜になるとまた私の布団に入ってきて、同じように「おねえちゃん、ぼく、あした かえるね」と言いました。

私ははっとしました。

――この子は、本当はずっと、がまんしてるんだ。
ずっと、ママに会いたいんだ。

そのいじらしい背中に胸がいっぱいになり、「そうだね。
明日になったら、ママに会いに行こうか」と声をかけました。

すると甥っ子は、少しだけ笑って「おねえちゃん……あしたは、なかなか こないねえ」と静かに返しました。

その言葉に、私は返す言葉を失い、横を見ると、隣の部屋から様子を覗いていたばあばが、そっと涙をこぼしていました。

■【結】〜再会の瞬間と心に残る笑顔〜
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そんな日々が続き、甥っ子と過ごす時間は約一ヶ月にもなりました。

ようやく妹の退院が叶い、家族が迎えに来る日――甥っ子は目を輝かせて「まま!」と何度も叫びながら、ママとパパのもとへ駆け寄りました。

その幸せそうな光景に、私たち家族は言葉もなく、ただ目頭を熱くして見守るしかありませんでした。

小さな体に、大きな気持ちを抱えて乗り越えた日々。

あの子が見せてくれた笑顔は、今も私の胸の奥に、あたたかく残っています。
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