裏切りの温度〜不倫の果てに残されたもの〜

○自宅・リビング（夜）

（薄暗い照明。
テーブルの上には飲みかけのコーヒー。
スマホの画面が何度も光る）

N：彼女は、いつも健気で誠実な人だと信じていた。
不倫相手を支える、優しい人だと――。

○同・ソファ（続き）

（ミサキ（30代・清楚だがどこか陰のある女性）がスマホを握りしめている）

SE：メッセージ受信音

ミサキ：（涙声の音声メッセージ再生）
「私が守らないと、彼が壊れてしまうの…奥さんも子供も寄生虫みたいに彼にしがみついて…」

（スマホを置き、ため息をつく）

N：彼女の言葉は、どこか自分に酔っているようだった。

○自宅・キッチン（翌朝）

（ユウコ（35歳・主人公、落ち着いた雰囲気）がコーヒーを淹れている。
スマホが鳴り続ける）

SE：携帯の着信音

ユウコ：（苦笑しながら、画面をちらりと見る）
（心の声）また…「私って可哀想な悲劇のヒロインなの！」って、毎日メールばかり。

○回想・カフェ（数日前）

（ミサキが涙ぐんでユウコに訴える）

ミサキ：（声を震わせて）
「親からは結婚を急かされてるの。
でも、奥さんが離婚してくれないの！」

ユウコ：（目を伏せて）
「……不倫は良くないよ。
奥さんと子供の気持ちも考えて」

（間）

SE：グラスを置く音

ミサキ：（激昂して）
「なによ、それ！私がどんな気持ちでいるか、分かってるの!?」

（沈黙。
ユウコがうつむく）

○自宅・リビング（夜）

（スマホに次々と通知が来る。
ユウコ、肩を落とす）

N：それでも、彼女からのメール攻撃は止まらなかった。

○ユウコ宅・玄関（冬・夕方）

SE：インターホンの音

（ドアを開けると、ミサキが立っている。
目は赤く腫れ、手には小さなバッグ）

ミサキ：（泣きじゃくりながら）
「今日は彼と温泉旅行の予定だったのに…子供が熱を出して、中止になったの！絶対、奥さんの策略よ！」

（ユウコの後ろ、リビングから咳き込む子供たちの声）

SE：子供の咳

ユウコ：（苛立ちを隠せず）
「…私の子供も熱なの。
私自身も体調悪いんだけど」

（ミサキは気にせず泣き続ける）

○同・玄関（続き）

（ユウコ、ついに感情が爆発する）

ユウコ：（怒りを抑えて、低い声で）
「いい加減にしてよ、この屑女。
あんたみたいな人に父親との時間を奪われる子供の方がよっぽど可哀想だよ。
…もう出て行って。
二度と来ないで！」

（ミサキ、一瞬固まり、目に怒りを浮かべてバッグを握りしめる）

ミサキ：（震える声で）
「……最低」

（ドアをバタンと閉めて出ていく）

SE：ドアが閉まる音

○自宅・リビング（夜）

（ユウコ、しばらく呆然と立ち尽くす）

N：もう、彼女を許すことはできなかった。

（ユウコ、スマホから証拠写真を選び、送信する指を震わせる）

○義父母宅・応接間（数日後）

（義父母（60代・厳格な夫婦）が写真を見て顔色を変える）

義母：（激怒して）
「なんてことを…！すぐに相手の家へ謝罪に行くわ！」

○不倫相手宅・玄関（後日）

（義父母が頭を下げている。
ミサキの姿はない）

N：不倫は、あっけなく露見した。

○ミサキの部屋（夜）

（段ボール箱を運び出すミサキ。
顔は憔悴しきっている）

SE：荷造りのガムテープの音

○工場・休憩室（朝）

（作業着姿のミサキが、無言でおにぎりを食べている）

N：慰謝料を請求されたが、義父母は支払いを拒否し、ミサキに働いて返済するよう命じた。

（BGM：切ない曲調に変わる）

○駅前・バス停（今月頭・早朝）

（ミサキ、大きな荷物を抱え、バスに乗り込む）

N：彼女は、静かにこの街を去っていった。

（フェードアウト）