不思議な話:十字架の手、消えた少女――小学校心霊ブームの果てに

十字架の手、消えた少女――小学校心霊ブームの果てに

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○小学校・教室(昼休み)

N:小学四年生の春。
私たちのクラスには、ある“ブーム”が訪れていた。

(教室の中央、女子児童たちが集まっている。
中心にはG(10歳・大人びた瞳)の姿。


SE:ざわざわと話し声、チョークの音

G:(細い声で)「わたし、みんなの霊能力がわかるんだよ」

(興味津々で集まるクラスメイトたち。
Gは一人ずつ手を取って、指で図形を描いていく)

N:Gが霊能力者だと名乗ったのが、すべての始まりだった。

私(10歳・好奇心旺盛)も手を差し出す。

G:(私の手に十字架を描きながら、微笑んで)「あなたにも力があるよ」

私:(少し嬉しそうに)「ほんとに?」

(クラスメイトたちが興奮気味にざわめく)

SE:子どもたちの笑い声

○小学校・教室(休み時間)

N:ある日、Gは「霊界に行く方法を見つけた」と言い出した。

(G、机にうつ伏せる。
クラスメイトも次々真似をする)

G:(小声で)「深く息を吸って…目を閉じて…」

(私も机にうつ伏せるが、何も感じない)

私:(心の声・困惑して)みんな、本当に霊界に行けてるの…?

(次第に子どもたちの証言が過激になる)

女子A:「おじいちゃんに会った!」

男子B:「俺、川を見た!」

N:クラスの空気は、Gを中心に奇妙な熱を帯びていった。

○小学校・教室(放課後)

(Gが机に突っ伏したまま、戻ってこない)

女子C:(不安げに)「Gちゃん、大丈夫?」

(先生(30代・真面目)が駆け寄り、Gを揺さぶる)

先生(焦って):「G!…G、起きなさい!」

(G、反応なし。
先生、Gを抱きかかえて保健室へ連れていく)

SE:教室が静まり返る

N:それ以来、「霊界に行く遊び」は禁止になった。

○小学校・校門(翌朝)

(Gが何事もなかったように登校してくる)

私:(ほっとしながらも、どこか不安げに)「…Gちゃん」

G:(うつむいて、無言)

○Gの自宅前(数日後・夕方)

SE:パトカーのサイレン

N:その後、Gのお母さんが池で亡くなった。
浅い池なのに、事故死とされた。

○小学校・校庭(昼休み)

(G、ベンチに座り、ぼんやりと遠くを見つめている)

N:母親の死以来、Gは静かに、誰とも話さなくなった。

(クラスメイトたちがGから距離を置き始める)

男子C:(小声で)「なんか、近寄りづらいよな…」

○小学校・教室(新学期・春)

N:五年生になっても、私はまたGと同じクラスになった。

○教室・窓際(放課後)

(私が教科書をしまっていると、Gが近づいてくる)

G(寂しげに):「…お母さんに、会いたい」

私:(驚いて)(どう返していいかわからず、黙る)

G(切実に):「霊界からお母さんを呼び出す方法があるの。
お願い、協力してほしい」

私:(涙をこらえて)「…いいよ」

(G、ほっとしたように微笑む)

○山の登山口(早朝・日曜日)

SE:鳥のさえずり、草を踏む音

N:日曜の朝、私たちは6人で○○山に集まった。

(G、女の子一人、男の子三人、私)

(Gが先頭に立ち、獣道を進む)

○山中・洞穴前(朝)

(藪を抜けた先に小さな洞穴)

G:「ここだよ」

(G、みんなに人形の形の紙を配る)

G:「名前を書いて」

(全員、紙にそれぞれの名前を書く)

○洞穴の中(仄暗い)

(ろうそくの火がゆらめき、6人が円形に座る)

G(小さな声で、祈るように):「お母さん、来てください…」

(私の手をGが握る。
その手は氷のように冷たい)

私:(驚いて、思わず手を離す)

SE:風が洞穴を吹き抜ける音/ろうそくの火が一斉に消える

(パニックになり、全員が叫びながら外へ飛び出す)

○山中・洞穴前(直後)

(全員、息を切らして外に出てくる)

女子B(泣きそうに):「Gちゃんが…いない!」

男子A(震え声で):「中…戻るの?」

(全員、ためらう)

(男子三人が意を決して洞穴に入る。
すぐに戻ってくる)

男子B:「…いない。
どこにも」

N:結局、Gのいたずらだと納得して解散した。

○小学校・教室(翌朝)

SE:チャイムの音

先生(神妙な面持ちで):「Gさんが、家に帰っていません」

(クラス全体がざわめく)

私:(顔色を変えて、先生のもとへ駆け寄る)

私(声を震わせて):「昨日…山で…」

(先生と私たち、現場へ向かう)

○山の登山口(午前)

(見渡しても、洞穴はどこにもない)

男子C(戸惑って):「そんな…確かにここだったのに」

N:Gを最後に見た場所として捜索が始まったが、彼女は見つからなかった。

○小学校・教室(数日後)

(私、窓の外をじっと見つめる)

N:Gはどこへ行ったのだろう。
あの時、手を離さなければ、何か違っていただろうか――

(BGM:静かに、切ない曲調に変わる)

(カメラ、ゆっくり私の横顔へズームイン)

(画面暗転)
読了
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