■【起】〜クラスに現れた“霊能力者”Gと心霊ブームの始まり〜
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小学四年生のある日、私たちのクラスで突如として心霊ブームが巻き起こった。
きっかけは、女の子のGが「自分は霊能力を持っていて、その力を見分けられる」と言い出したことだった。
クラスメイトは興味津々でGの周りに集まり、彼女は一人ずつの手のひらに図形を描いていった。
私もGに手を差し出すと、彼女は私の手に十字架の絵を描き、それを見て私は少し誇らしい気持ちになった。
Gはしだいにクラスで特別な存在となり、皆の注目を集めるようになっていった。
■【承】〜遊びの深化とGを巡る異変〜
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ある日、Gは「霊界に行く方法を見つけた」と宣言し、クラスでは休み時間ごとに机にうつ伏せて行う「霊界に行く遊び」が流行し始めた。
しかし私にはその感覚が分からず、みんなが本当に霊界に行けているのか訝しく思っていた。
次第にこの遊びは過激さを増し、「霊界でおじいさんに会った」「川を見た」など語る子も現れた。
Gはクラスの中心、まるで教祖のような存在となった。
だがある日、彼女は「霊界から戻れなくなった」と言い出し、先生が来ても目を覚まさず、保健室へと運ばれた。
翌日には何事もなかったかのように登校してきたGだったが、この一件で「霊界に行く遊び」は危険だとされ、禁止となった。
そして、Gの母親がため池で亡くなったという知らせが届く。
事故死とされたが、浅い池で大人が溺れるはずもなく、クラスには不穏な空気が漂った。
母親の死後、Gは急におとなしくなり、休み時間もほとんど動かず、クラスメイトも彼女から離れていった。
■【転】〜“霊界の扉”へ――禁断の儀式と少女の消失〜
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小学五年になってクラス替えがあったが、私は再びGと同じクラスになった。
ある日、Gが「お母さんに会いたい」と私に話しかけてきた。
「霊界からお母さんを呼び出す方法があるから協力してほしい」と言われ、私は同情心から「いいよ」と答えた。
Gは私に女の子をもう一人と、男の子三人を集めてほしいと頼み、日曜の朝、私たち六人は○○山の登山口に集まった。
Gは案内役となり、獣道を進んだ先の開けた場所にある洞穴へと私たちを導いた。
Gから人形の形をした紙を渡され、それぞれ名前を書かされた。
洞穴の中で円になって座ると、Gは「お母さんを呼び出す」と儀式を始めた。
そのとき、私の手を冷たい手がぎゅっと握る感触があり、私は驚いて思わず手を振りほどいた。
直後、洞穴に風が吹き込み、ろうそくの火がすべて消えた。
私たちはパニックになって外へ飛び出した。
外で点呼を取ると、Gだけがいなかった。
誰も洞穴に戻りたがらなかったが、男子三人が意を決して中を確認したものの、Gの姿はどこにもなかった。
結局「Gのいたずらだろう」と皆で納得し、そのまま解散した。
■【結】〜消えたG、残された問いと心のざわめき〜
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翌日、学校でGが家に帰っていないと先生から知らされた。
私たちは昨日の出来事を先生に話し、現場に戻ったが、そこに洞穴は見つからなかった。
Gを最後に見た場所として捜索は行われたが、彼女は二度と発見されなかった。
Gはどこに消えてしまったのだろう。
もしあのとき、私が手を離さずにいたら、何かが違っていたのだろうか――。
今も胸の奥に、あの冷たい手の感触と、答えのない問いだけが残っている。
不思議な話:霊界ごっこと消えた少女――小学生の恐怖と不安の記憶
霊界ごっこと消えた少女――小学生の恐怖と不安の記憶
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