○安ホテル・客室(夜)
(部屋の片隅、数人の仕事仲間が安い酒を囲んでいる)
佐藤真一(35・営業・人懐こい):
「やっぱり出張って、こういうのが楽しみだよなぁ」
村上智也(32・経理・真面目):
「いや、俺は早く寝たいんだけど…」
(皆、苦笑い。
和やかな空気)
SE:電話のベルが鳴る
(佐藤が受話器を取る)
佐藤:
「はい、佐藤です。
……え?神藤さん?」
(眉をひそめる)
佐藤:(心の声)
誰だ、それ…?聞き覚えがない。
○同・エレベーターホール(夜)
(佐藤、一人でエレベーターに乗り込む)
SE:エレベーターの扉が閉まる音
(不意に、背後に気配を感じる佐藤)
佐藤:(息を殺して)(振り返る)
(ドアが開く。
佐藤、降りてすぐ、そっと後ろを振り返る)
(カメラ、佐藤の視線の先をパン)
(白く細い腕、赤いマニキュアの爪がドアに吸い込まれる)
佐藤:(凍りつく)(声にならない)
佐藤:(心の声)
あれは、人の手じゃ…ない。
○同・フロント(夜)
(佐藤、汗を拭きながらフロントへ急ぐ)
佐藤:
「あの…さっきの電話、神藤さんって…」
フロント係(20代・女性・困惑気味):
「はい、お電話は確かにつなぎましたが…内容が…どうしても思い出せなくて」
佐藤:(戸惑いながら)
「そうですか…すみません、変なこと聞いて」
(フロント係が頭を下げる)
佐藤:(苦笑しながら)
「大丈夫です」
○同・客室(夜)
(部屋に戻ると、仲間たちはすでに寝息を立てている)
(佐藤、冷蔵庫からビールを取り出す)
SE:プシュッという缶を開ける音
(しばらくして、ドアをノックする音)
SE:ノック音
佐藤:(驚いて)(そっとチェーンをかけたままドアを開ける)
(廊下には誰もいない)
(佐藤、肩をすくめて椅子に戻る)
(窓の外に何か大きなものが落ちていく影)
佐藤:(目を凝らして)(心の声)
酔ってるのか…?
(念のため、窓を開けて下を覗く)
(何もない)
SE:再びノック音
(佐藤、今度はドアを開けずに、のぞき窓を覗く)
(やはり誰もいない…)
(ふと足元に目を落とす)
(ドアと床の隙間から、赤いマニキュアの指が床を引っかいている)
SE:ガリガリ…ガリガリ…
佐藤:(凍りついて、無言で後ずさり)(転倒し、気を失う)
(画面暗転)
○翌朝・ホテル前(朝)
(騒然としたホテル前。
人々が集まり、警察未到着の現場に悲鳴と嗚咽)
SE:ざわめき、誰かの泣き声
(佐藤、青ざめた顔で遠巻きに現場を見つめる)
(地面には見るに耐えない形で女性が横たわる)
N:
翌朝、ホテルは飛び降り自殺の噂で騒然としていた。
(佐藤、無意識に彼女の指を見つめる)
(赤いマニキュアが鮮烈に映る)
佐藤:(心の声)
偶然じゃ、なかったんだ…。
(フラッシュバックのように、昨夜の赤い爪の映像)
N:
後に、彼女の右手だけが、どうしても見つからなかったという。
(BGM:静かに不穏な旋律が流れ始める)
(フェードアウト)
怖い話:赤いマニキュアの影 〜仙台出張、安ホテルの夜〜
赤いマニキュアの影 〜仙台出張、安ホテルの夜〜
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