赤いマニキュアの指が、真っ白な手から不自然に伸び、床を引っかくようにして動いていた――。
ホテルの廊下には悲鳴と嗚咽が満ち、地面には無惨な女性の遺体。
その右手だけが、どこにも見当たらない。
3時間前――。
眠れぬ夜、冷蔵庫からビールを取り出したときだった。
ドアをノックする音。
チェーンロック越しに覗くも、誰もいない。
椅子に戻ると、窓の外を何か大きなものが落ちていくのが見えた気がした。
酔いのせいかと窓を確かめても、下には何もない。
再びのノック。
今度は覗き窓から誰もいないことを確認する。
だが、足元――ドアと床の隙間から、赤いマニキュアの指が不気味に床をかいていた。
その音に恐怖し、後ずさった拍子に転倒し、意識を失った。
その少し前――。
部屋に戻ったとき、皆はもう眠っていた。
フロントからの電話――「神藤」という女性からの呼び出しの後。
フロント係も電話の内容を思い出せず困惑していた。
エレベーターを降りるとき、背後に気配。
振り向くと、赤いマニキュアの爪が印象的な白い腕がドアに吸い込まれていくのを見た。
「あれは人の手じゃない」と、嫌な汗が背中を伝った。
そして、すべての始まりは――
仕事で仙台を訪れた夜。
安ホテルの一室で同僚たちと酒を酌み交わしていた。
そのとき、見覚えのない女性「神藤」からの電話がかかってきたのだ。
今、思い返す。
あの夜、ホテルの床を引っかいていた赤いマニキュアの指、その正体は…朝になって騒然となった飛び降り自殺の現場の女性だった。
偶然ではない。
彼女の右手は、最後まで発見されなかったという。
怖い話:赤いマニキュアの指――仙台安ホテル怪異逆転録
赤いマニキュアの指――仙台安ホテル怪異逆転録
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