■母を二度見送った男性の記憶――弁当のおにぎりがつなぐ家族の物語
5歳のときに実母を亡くし、再婚家庭で成長した東京都在住のAさん(仮名・27歳)は、今年2月、二人目の母も病気で失った。
Aさんは「二人の母のおかげで、今も前向きに生きている」と語る。
Aさんの人生には、家族という枠組みの変化と、それに伴う葛藤と和解があった。
■喪失から始まった家族の再構築
Aさんが最初の転機を迎えたのは、小学1年生の日曜日だった。
父親から「会ってほしい人がいる」と告げられ、姉とともに初めて父の交際相手と対面した。
Aさんは「子どもながらに再婚を直感した」と振り返る。
姉はすぐに打ち解けたが、Aさんは人見知りのため会話が続かず、複雑な心境だったという。
その日の夕食時、父親は「結婚してもいいか」と子どもたちに確認した。
Aさんは「気持ちは複雑だったが、姉の笑顔や父の幸せを思い、反対はできなかった」と明かす。
こうして家族は「四人家族に戻った」。
■動物園のおにぎりが和解のきっかけに
再婚後もしばらく、Aさんは新しい母親に心を開けずにいた。
転機は、家族で動物園に行く予定だったある休日に訪れた。
姉が体調を崩し、Aさんは母親と二人で動物園に出かけることになった。
「最初は気まずかった。
でも、昼に母が作ってきた弁当のおにぎりを食べた瞬間、実母と過ごしたピクニックの記憶がよみがえり、涙が止まらなかった」とAさん。
母親も戸惑いながら寄り添い、その後は打ち解けて様々な話をしたという。
「あの日を境に、母親として受け入れることができた」と語る。
■二度目の喪失と感謝の念
再婚から22年後の2024年2月、Aさんは二人目の母も病気で失った。
「あのときのおにぎりの味は今も忘れない。
二人の母がいたから、今の自分がある」とAさんは話す。
■専門家が語る「再婚家庭の子どもたち」
家族心理学が専門のB教授(都内大学)は、「再婚家庭では、子どもが新しい親を受け入れるまで時間がかかることが多い」と指摘する。
一方で、「日常のささいな出来事や食卓をともにする体験が、家族の絆を深めるきっかけになる」とも述べた。
■家族の多様性と今後
日本では離婚後の再婚やステップファミリーが増加傾向にある(厚生労働省調査2022年)。
家族の形が多様化するなか、「血縁にとらわれない家族関係の構築」が社会課題となりつつある。
Aさんの経験は、そうした家族のあり方に一石を投じるものだ。
Aさんは「二人の母に恥じないよう、これからも家族と向き合っていきたい」と話す。
家族のあり方が問われる時代、私たち自身も身近な関係を見つめ直す必要があるのかもしれない。
感動する話:「二人の母」と歩んだ27年 再婚家庭で育った男性が語る喪失と再生の記憶
「二人の母」と歩んだ27年 再婚家庭で育った男性が語る喪失と再生の記憶
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