感動する話:二人の母とおにぎりの記憶――家族の再生と絆の物語

二人の母とおにぎりの記憶――家族の再生と絆の物語

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■【起】〜失われた日常と新たな出会い〜
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俺の母親は、俺が5歳の時に癌で亡くなった。
それからは、父と2歳年上の姉、そして俺の三人だけの生活が続いた。

母の不在が残す静かな寂しさの中、家族は日常をやりくりしていた。
そんなある日、小学1年生の日曜日、父が俺と姉に「今から二人に会って欲しい人がいる」と切り出す。
父が連れてきたのは、父より少し若い、優しそうな顔の女性だった。

俺は子どもながら、父がこの女性と再婚するつもりだと感じた。
姉はすぐにその人と打ち解けていたが、俺は人見知りでうまく話せなかった。

■【承】〜戸惑いと、四人家族の日々〜
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その女性が帰った後、父は夕食の時に「父さん、あの人と結婚してもいいかな?」と尋ねた。
正直、気持ちは複雑だったが、姉も嬉しそうだったし、父の幸せを思うと反対できず、俺も喜んでいるふりをした。

こうして、家族は四人家族になった。
けれど、俺は新しいお母さんに懐くことができず、どこか距離を感じていた。
それでも、日々は静かに流れていった。

ある休日の前夜、父が「明日はみんなで動物園に行こう」と言った。
動物園なんてほとんど行ったことがなかった俺は、心から楽しみになり、翌朝は早起きしてしまった。

ところが、姉が熱を出してしまい、父は看病のため家に残ることに。
結局、俺と新しいお母さんの二人きりで動物園へ行くことになった。

■【転】〜おにぎりがつなぐ心の扉〜
───────

動物園に着いても、気まずい空気は消えなかった。
言葉も少なく、思うように楽しめなかった。
昼になり、ベンチでお母さんが作ってくれたお弁当を食べることにした。

俺はおにぎりを一つ手に取って口に運ぶ。
すると、不思議なほど鮮明に、元気だった頃の本当の母が家族でピクニックに行った時の記憶が蘇る。
水気を吸って柔らかくなった海苔、ほどよい塩味。
懐かしさと共に、涙が止まらなくなった。

お母さんは戸惑っていたが、涙はあふれ続けた。
そのとき初めて、この人が母親なのだと心で感じることができた。

それから、動物園を回りながら、今まで話せなかったことをたくさん話した。
気づけば、心から楽しく、嬉しい時間になっていた。

■【結】〜二人の母と共に生きる〜
───────

それから22年後。
今年の2月、あの時の母も病気で亡くなった。

俺は、あの日動物園で食べたおにぎりの味を今もはっきり憶えている。
二人の母のおかげで、俺は今日も元気に生きている。
失われたものと、得られたもの。
その両方を胸に、俺は歩き続けていく。
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