不思議な話:不自然な道とドライブイン

不自然な道とドライブイン

この話がオカルトや怪談に入るかは微妙だが、書く場所もないのでここに記す。
個人的にはとても怖かった体験だ。
会話はうろ覚えで、当時こうだった程度に書いている。
不自然さを感じたらごめんなさい。

去年の夏、友人たちと集まっている時、暇だったのでドライブに行かないかという話になり、特に目的もなく長野まで行くことにした。
メンバーは俺、A、B、Cの4人で、暇な時はこのメンバーが集まることが多い。
目的もなく出発したので、男4人で適当に観光地で飯を食い、日が暮れてから帰ることになった。

長野と群馬の県境をカーナビに頼って走っていると、運転していたAが助手席の俺に「道が変じゃないか?」と言ってきた。
俺も言われてみれば、道幅が狭くなりガードレールは錆びているし、道路にはひびが入り雑草まで生えている。
カーナビにはずっと一本道が表示されていたのでそのまま進んだが、30分ほど走っても状態は変わらず、すれ違う車もなく皆不安になってきた。

Cが「一端どこかに車を停めてルートを再確認した方がいい」と言い出した頃、少し先にドライブインらしい明かりが見えた。
駐車場には数台の車が停まっている。
それだけで俺たちはホッとした気分になった。
無人のドライブインらしく、店員はいないが自販機が並んでいた。
各々トイレへ行ったり飲み物を確保することにした。

AとCはトイレへ向かい、俺とBは自販機コーナーの隣にある休憩所へ。
休憩所の入り口に異様なものを見た。
掌よりも大きな蛾がとまっている。
真夏に大きな蛾というのも不自然だが、その羽の模様が人の顔のように見える。
俺とBはその蛾を見ないようにして中へ入った。
後から思うと、この時点で何かがおかしいと気付くべきだったかもしれない。

中は薄暗く、テーブルが並んでいるが床や壁も小汚い。
奥にはゲームがあり、どれも古そうだ。
50代くらいの男がテレビを見ている。
妙な違和感を感じた俺は、Bに話そうとすると、Bが「おい、あっちに女の子3人組がいるぞ!声かけようぜ!」と嬉しそうに言ってきた。
たしかに20歳くらいの女の子3人組がテーブルを囲んでいるが、表情は不安そうで、話し合っているようだ。

すると、1人が俺たちに気付きこちらにやってきた。
Bは顔に嬉しそうな様子を出していたが、俺は不安感を感じていた。
女の子は「あのー、ここって関東方面へ抜ける道でいいんですよね?それと、このドライブイン…変じゃないですか?」と言ってきた。

休憩所に入って以来、妙な違和感を感じていた俺は、自分も変だと感じていたことを話し、同じ席で少し事情を聞くことにした。
Bが「お前結構やるじゃん」とニヤニヤしながら言ってきたが、状況が状況だけに無視することにした。
状況を説明し終わった頃、女の子の1人が「あそこのテレビの前にいる人なんだけど…」と話を切り出した。

俺もその人を改めて見ると、テレビとテーブル、その人のサイズの比率が明らかにおかしい。
立ったら3〜4mはあるんじゃないかというくらいにでかい。
Bも「でかすぎるよな…なんだあれ…」と独り言のように言っている。

更にその女の子は「あの奥のプリクラのところなんだけど…」と言うのでそっちを見ると、ロングスカートを履いた女の人の脚がプリクラのカーテンの下から見える。
その子がいうには、あの女の人は自分たちが来た時からずっと1人でそこにいて動かないのだという。
そして「あとなんか変な音聞こえませんか?人が話しているような…」と言われてみれば、ぼそぼそと大勢の人が話しているように聞こえる。

そんな話をしていると、休憩所と自販機コーナーの間にあるドアが開きAとCが入ってきた。
俺たちと女の子を見てCが「お前ら何ナンパしてんだよ…」と呆れたように言うと、「そんな事よりこっち来てくれ、変なのがあるんだが」と、真顔で言ってきた。
Aもふざけた様子はなく、俺とBが変なのってなんだよ?と聞くと、説明できないから自販機コーナーに来てくれという。

自販機コーナーに入ると、Aが指差したのはカップでコーヒーなどを売っている自販機だった。
その自販機、液晶画面のところに明らかに生身の口があり、それが「いらっしゃいませ」と喋っていた。
Cは「変だろ?最初人が入っているのかと思って声かけたり自販機を叩いたりしたけど、何の反応もないんだよ」という。

このドライブインは何かがおかしい。
とりあえずAとCに事情を話し、いったん外に出ようと話していると、休憩室の方を見ていた女の子が「ちょっとあれ!」と動揺した声で俺の肩をゆすりながら指差した。

指差した方を見ると、さっきプリクラの所にいた女の人が出てきてこちらに向かって歩いてきている。
だが、その女の人は上半身がない。
下半身から上の部分が漏斗を逆さにしたように収束していて、その部分は棒とも紐ともつかないものが真っ直ぐ上へ伸びている。
それがユラユラと揺れながらこちらへと向かってくる。
姿からしてどう見ても人間ではない。

俺たちはその異様な姿に完全に思考が停止し、全員外へと逃げ出した。
振り返ると、その『物体』は俺たちを気にする事もなくトイレの方へと消えていった。

とにかくここを出よう。
そう考えた俺たちは、カーナビ通りならこの先へ進めば街中へ抜けられることを確認し、女の子たちにはスピードを出さないからついて来れば大丈夫と話した。
すると、突然後ろの方、駐車場の奥の林からかなりの人数の人影が下りてきてこちらへと向かってくるのが見えた。
更に、人影以外に林のほうから何かがこちらに向かってジャンプして突っ込んできて、俺たちの車の隣に駐車していたトラックに衝突した。

街灯の明かりに照らされたそれは信じられないことだが、1m以上ある巨大な蛆で、衝突した衝撃でトラックのガラスが割れ、蛆のほうは地面に落ちて黄色い体液を流しながら動いている。
しかもそれ1匹だけではなく、少なくとも目で見える範囲だけであと7〜8匹が飛び跳ねている。
何匹かはこちらに向かってきそうだ。

身の危険を感じた俺たちは、女の子たちにも早く車に乗るように指示したが、彼女たちは駐車場の反対側の方へと駆けて行き、「この中に入って隠れてやり過ごそうよ」と駐車場の隅にあるプレハブの倉庫らしい小屋を指差した。

俺は彼女たちが明らかにパニックになって冷静な判断ができなくなっていると思い、「いいから車に乗れ!」と怒鳴って4人で腕を引っ張って無理矢理連れ戻し、かなり近くまで来ていた人影の集団とジャンプする巨大な蛆を尻目に無理矢理彼女たちを車に乗せた。
彼女たちの車のほうはBの運転でドライブインから逃げ出した。

道路に出て後ろを見ると、付いてきている女の子たちの車の後ろにジャンプする蛆が見えたが、車のスピードには追いつけないのかそのうち見えなくなった。

1時間くらい走ると、下に街の明かりが見えてきた。
すると、後ろの車に乗っているCから女の子たちがトイレに行きたいと言っているから、どこかに停まろうと電話がかかってきた。
暫く走ると、公園か何かの施設の駐車場らしき場所があったので、そこで一端車を停めることに。

彼女たちは「3人で行って来る」と言い、さっさと行ってしまった。
待っている間に俺は彼女たちの車を見ると、ドアが開いているのが見えた。
何となく車内を見ると、バッグが地面に落ちかかっていて、手を触れたところ中身がぶちまけられた。
「これ戻しておかないとヤバくね?」と振り返ると、トイレに向かったA、B、C達が戻ってきた。

Aが言うには、トイレの中に入ってみたが誰もおらず、すれ違いになったのだという。
俺たちは、ドライブインでの出来事を信じてもらえるかどうか不安だったが、彼女たちのことが心配なので110番通報することにした。

警察が来るまでの間、交代で探しに行ったりもしたが見付からず、15分ほどで警察がやってきた。
事情を話すと、警官が「その女の子たちの車ってどれのこと?」と言う。
振り向くと彼女たちの車がない。
探しても駐車場には俺たちの車しかない。

不信そうに見る警官、俺たちは気まずい状況になったが、さっきぶちまけたバッグを屋根の上に置きっぱなしだったことを思い出した。
警官にバッグを見せて、探してほしいと頼んだが、話は荒唐無稽すぎて信じてもらえなかった。

後日、バッグが10年以上前に失踪届けの出ていた短大生のものと判明し、事情聴取を受けた。
俺たちは事件に関係がないことはすぐにわかったが、バッグの入手先について詳しく聞かれた。
警官が言うには、俺たちが通ってきた道にドライブインなどないという。
現場検証で来た道を逆に辿ったが、例のドライブインどころか荒れた道すら見つからなかった。

ただ、事情聴取のときに見せられた短大生の写真は、3人組のうち1人で間違いなかった。
警官から話を聞くかもしれないと言われたが、未だ連絡はない。

今思うと、彼女たちには不審な点が多い。
見た目が失踪当時のままということもあるが、彼女たちは俺たちと同じルートでドライブインに到着したはずなのに、到着した時間にそれほど時差はないはずなのに、俺たちはあの道で一度も前方に車のヘッドライトを見ていない。

また、あの異様な状況で普通いきなり入ってきた見ず知らずの男2人組に、不安感を感じている女の子が何の警戒もなく話しかけるだろうか?プレハブ小屋の中でやり過ごそうと提案したのも、本当にパニックになっていたからか?もし、彼女たちの言うがままプレハブ小屋に立て篭もっていたら、俺たちはどうなっていたのだろうか。

彼女たちの言動は、今から考えると何らかの悪意があったようにしか思えない。
そもそも俺たちは彼女たちがなぜあの山道を通ったのか、その理由すら知らない。
読了
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